再生可能エネルギーの電力を余らせない、風力・小水力・バイオマスで水素を作るエネルギー列島2016年版(1)北海道(3/4 ページ)

» 2016年04月05日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ダムで水素を作って酪農や温水プールに

 再生可能エネルギーから水素を製造する取り組みはバイオマスと風力だけにとどまらない。3つ目の実証プロジェクトがダムの近くでも進んでいる。東部の白糠町(しらぬかちょう)に道営の「庶路(しょろ)ダム」がある(図8)。洪水対策と工業用水を供給するために造られたダムだが、発電には使われていない。

図8 「庶路ダム」の全景。出典:北海道釧路総合振興局

 北海道庁は庶路ダムに小水力発電の事業性があると判断した。地元の白糠町や釧路市、さらに東芝を加えて、2015〜2019年度の5年計画で小水力発電所を建設する。この発電所には苫前町のプロジェクトと同様に水電気分解装置を併設して、水素を製造できるようにする計画だ。

 発電能力は220kWを想定している。1日あたり最大1000立方メートルの水素ガスを製造して、高圧の状態でトレーラーなどに積んで輸送する(図9)。輸送先は道内の水素ステーションのほか、地域の酪農家や温水プールに設置した燃料電池に供給する予定だ。寒冷地の北海道では熱の需要が多い。燃料電池で電力と温水の両方を供給して、CO2フリーのエネルギーの利用を拡大できるメリットは大きい。

図9 小水力発電を利用した水素サプライチェーン実証の実施イメージ。出典:東芝

 このほかに製鉄の町として知られる室蘭市でも、水素と再生可能エネルギーを活用して「グリーンエネルギータウン」を展開する構想がある。市内には風力発電所が2カ所とメガソーラーが1カ所で稼働している。それに加えて室蘭市が運営する「蘭東下水処理場」で、2016年4月中にバイオガス発電設備が運転を開始する予定だ(図10)。

図10 「蘭東下水処理場」で実施するバイオガス発電事業。出典:月島機械

 グリーンエネルギータウン構想では再生可能エネルギーの電力を拡大するのと同時に、余剰電力を使って水素を製造する。さらに製鉄所でも鉄を作る工程で水素ガスが副生物として発生することから、両方の水素をエネルギー源として利用できるように地域内に水素の供給インフラを整備する計画だ(図11)。

図11 「室蘭グリーンエネルギータウン」の構想(画像をクリックすると拡大)。出典:室蘭市経済部

 室蘭市では2020年までに再生可能エネルギーと水素エネルギーの導入量を2012年度の2倍に拡大することが当面の目標になる。そのうえで電力・ガス・水素・熱のネットワークを市内に拡大して、住宅や工場、自動車やバスにもCO2フリーのグリーンなエネルギーを供給していく。

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