北海道の再生可能エネルギーは太陽光からバイオマスまで豊富だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模を見ても、5種類すべてが全国のトップ10に入る(図12)。特に太陽光発電は広大で平坦な土地が多い利点を生かして、沿岸部を中心に巨大なメガソーラーの建設計画が拡大中だ。
すでに運転を開始したメガソーラーでは「ソフトバンク苫東安平(とまとうあびら)ソーラーパーク」が圧倒的な大きさを見せる。国内でも有数の日射量になる北海道の太平洋沿岸に広がる166万平方メートルの土地を利用した(図13)。
2015年12月に運転を開始して、発電能力は111MWに達する。現在のところ青森県の「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」(発電能力115MW)に次いで、日本で2番目に大きいメガソーラーである。
年間の発電量は1億800万kWhを見込んでいる。一般家庭の使用量に換算して3万世帯分に相当する。このメガソーラーが立地する安平町の総世帯数(4200世帯)をはるかに超えて、隣接する苫小牧市の総世帯数(8万7000世帯)の3分の1をカバーできる電力量になる。
苫小牧市内で2016年1月に運転を開始した「シャープ苫東の森太陽光発電所」の規模も大きい。140万平方メートルの土地を利用して、発電能力は46MWある(図14)。年間の発電量は5100万kWhになる想定で、1万4000世帯分の電力を供給できる。
北海道には地熱の資源量が豊富な場所も数多く分布している。これまでにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が道内の14地域で地熱開発の調査を実施した。そのうちの半数以上は南西部に集中していて、札幌市から30キロメートルほどの距離にある阿女鱒岳(あめますだけ)の周辺地域も含まれている。
この一帯で出光興産など3社が2011年から地熱発電の事業化に向けた調査を進めて、2015年10月には仮噴気試験を開始した(図15)。仮噴気試験は発電所の建設に先がけて実施する掘削調査の後半にあたる。地下2000メートルから噴出する蒸気の量や温度を測定して地熱の資源量を評価するプロセスだ。
2017年3月まで仮噴気試験を続けた後に、環境調査などを実施して発電事業の可否を決定する。実際に発電所を建設して運転を開始できる時期は2020年代になる見込みだ。開発期間は長くかかるが、いったん稼働すれば長期にわたって安定した電力を供給できる。
地熱で発電した電力もCO2フリーの水素を製造するエネルギー源になる(図16)。2020年代には北海道の再生可能エネルギーで作った水素が全国各地で広く使われている可能性は大きい。国が推進する地球温暖化対策の面でも、「北海道産の水素」が重要な役割を果たすことになる。
2015年版(1)北海道:「北の大地が生み出す水力と水素、日本の新たなエネルギー供給基地に」
2014年版(1)北海道:「太陽光発電で全国1位に躍進、日射量が豊富な地域に日本最大のメガソーラー」
2013年版(1)北海道:「再生可能エネルギー200%へ、風力を筆頭に太陽光や地熱も」
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