電気容量が2倍に、全固体リチウムイオン電池の新しい負極材料を開発:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
新たに開発した穴あきグラフェン分子は、タンスの中などに入れる衣類用防虫剤として広く使用されるナフタレンを環状に連ねたものだ。分子中央部にナノメートルサイズの孔を持つ。研究グループはこの穴あきグラフェン分子が、どのようにして、大きな電気容量・リチウム容量を実現しているかについても解析を行った。
粉末X線回折という手法を用いて解析を行ったところ、穴あきグラフェン分子が積層していくと同時に、中央にある孔がそろうことが分かった。この性質によって穴あきグラフェン分子の固体では一般的な負電極材料として使われる黒鉛と似た積層構造を持ち、さらにそれを貫く細い孔(細孔構造)をつくるということが明らかになった。
通常、黒鉛では炭素膜が積層した構造の「隙間」にのみリチウムが蓄積する。一方今回開発した穴あきグラフェン分子では、精密に設計されたナノサイズの「隙間」と「細孔」の2つの場所にリチウムを蓄積できるため、大容量化につながったとしている(図3)。
図3 新負電極分子材料の動作想定図。リチウム(黄色)は、孔(青色)を通って取り込まれ、穴あきグラフェン分子の間にある隙間と孔部分の双方に蓄積される。この蓄積によるリチウムの量は既存の黒鉛電極の2倍以上にに相当する。上図は蓄積場所・通り道を示した全体図。下図は穴あきグラフェン分子とリチウムの相互作用を詳細に示した模型図 出典:東北大学
研究グループは今回の成果について「防虫剤として良く知られた分子であるナフタレンを大容量電池のための電極材料に変換できることを示した。日本が最先端の研究力を持つ有機化学の力によって、近い将来、高性能電池のための分子材料が自在に設計されることを期待させる成果」としている。
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