電気容量が2倍に、全固体リチウムイオン電池の新しい負極材料を開発蓄電・発電機器(1/2 ページ)

東北大学の研究グループは2016年5月14日、全固体リチウムイオン電池用負電極材料として、黒鉛電極の2倍以上の電気容量を実現する新材料を開発したと発表した。

» 2016年05月17日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の磯部寛之氏らの研究グループは、全固体リチウムイオン電池用の負電極材料として、黒鉛電極の2倍以上の電気容量を実現する新材料を開発した。防腐剤などに利用されるナフタレンから作った「穴あきグラフェン分子」(以下、CNAP)という材料を活用したもので、充放電を65回繰り返しても電気容量を保てたという(図1)。

図1 新材料による電極に使った全固体リチウムイオン電池 出典:東北大学

 あらゆる分野で蓄電池のニーズが高まる中で、リチウムイオン電池のさらなる高性能化に向けた基本材料の研究が進んでいる。その中でもより電気容量の大きな負電極材料の研究開発にも注目が集まっている。一般的に負電極材料には軽量かつ大きな電気容量を持つ黒鉛(グラファイト)が利用されている。しかし最近、ナノカーボンとも呼ばれるグラフェンやカーボンナノチューブが新しい炭素材料として登場し、電気容量を2〜3倍にまで大容量化ができる可能性が分かってきたためだ。

 しかし、ナノカーボンはいろいろな構造体が混ざったものであるため、大容量化の原理・指針を解き明かすこと難しい。これがナノカーボン負電極の再現性の高い大容量化や、さらなる大容量化を実現するための障害となっている。

 こうした背景のもと、研究グループは今回、2011年に開発した穴あきグラフェン分子がリチウムイオン電池の大容量電極材料になることを明らかにした。この分子の固体を負電極にして電池を作ると、多くのリチウムを出し入れすることが可能であり、その電気容量・リチウム容量は、実用化されている黒鉛電極の2倍以上に相当するという。さらにこの大容量は65回の繰り返し充放電を行っても完全に保たれた。研究グループはでは「電極として、とても優れた材料であることが分かった」としている(図2)。

図2 新負電極分子材料を使った全固体リチウムイオン電池とその断面の電子顕微鏡図。電子顕微鏡図の灰白色部分に穴あきグラフェン分子(CNAP)が入っている。黒みがかった部分は固体電解質 出典:東北大学
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