原油安に潜む大型リスク、日本のエネルギー安全保障に危機感エネルギー管理(3/3 ページ)

» 2016年05月20日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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2.LNG調達環境の整備を

 2つ目の対策が、石油価格の変動リスクを見越した液化天然ガス(LNG)調達環境の整備だ。現在のLNG取引価格は原油価格に連動して決まる。そして、大部分は長期契約による調達を行っている。そのため、高油価局面では日本のLNG輸入価格が他の地域に比べ極端に高くなるといった状況も発生している。

 日本は世界最大のLNG消費国である。エネルギー白書ではこうした日本の「大口顧客」という立場を活用し、現在契約の多くに付されておりLNGの需給に応じた売買を制限している仕向地条項の緩和や、原油価格との連動ではない「透明」なLNG価格指標の確立などに向けた国際交渉を進める方針を示している(関連記事)。

3.国際的なエネルギー需要の緩和へ

 3つ目が日本の持つ省エネの推進だ。もちろん日本国内におけるさまざまな分野での省エネも必須だ。こちらはエネルギー革新戦略に基づいて、分野ごとの省エネ指標や目標が掲げられている(関連記事)。エネルギー白書ではこうした日本国内の省エネに加え、日本の持つ省エネ制度・技術の国際展開による国際的な省エネへの貢献を推進していく方針も示した。

 その背景にあるのが中国やインド、さらに東南アジアなどで経済発展に伴いエネルギー輸入依存度が高まると見込まれている点だ(図4)。各国で省エネ制度の策定が進んでいるが、遅れている場合もある。そこで日本の省エネ制度やインフラ技術を輸出していくことで、国際的なエネルギー需要の緩和につなげていく狙いだ。

 既に経済産業省は2015年に「Enevolution(エネボリューション)」イニシアチブを立ち上げ、インドネシアやインド政府とエネルギー分野についての協力を進めている。

図4 新興国を中心にエネルギー輸入依存度が上昇している(クリックで拡大)出典:平成27年度 エネルギー白書
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