水素パイプラインや次世代燃料電池も、選手村に最先端のエネルギー技術スマートシティ(1/2 ページ)

東京都はオリンピック・パラリンピックの選手村に水素エネルギーを中核にした電力・熱の供給システムを構築するため、2016年度中に事業計画を策定して準備に入る。水素ステーションと水素パイプラインを設置するほか、次世代燃料電池や燃料電池バスによる高速輸送システムも導入する。

» 2016年05月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 2020年に開催する東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)の選手村を対象にしたエネルギー事業のプロジェクトが始まる。東京都は2016年度内に事業計画を策定するために、計画づくりに協力する民間企業の募集を5月19日に開始した。7月中に事業協力者を決定して、具体的な計画策定に着手する。

 東京湾岸の晴海(はるみ)地区に整備する選手村と周辺エリアを対象に、最先端の水素エネルギーを活用した街づくりを進める計画だ(図1)。オリンピック開催後に防災能力の高い自立分散型の「スマートエネルギー都市」を確立する狙いで、水素ステーションや水素パインプライン、さらには電力・熱・水素を供給できる次世代燃料電池を導入する。

図1 「東京2020大会後の選手村」の実現イメージ。出典:東京都都市整備局

 対象の地域は晴海ふ頭や中央清掃工場がある「晴海五丁目西地区」で(図2)、選手村を建設した後は住宅に転換することになっている。東京都の構想では中央清掃工場の横に水素ステーションを設置するほか、水素ステーションと地区内をつなぐ水素パイプラインを敷設する予定だ。都心の主要な拠点と結ぶ「バス高速輸送システム(BRT:Bus Rapid Transit)」も導入する計画で、水素で走る燃料電池バスを大量に配備する。

図2 「選手村エネルギー事業」の対象地域(画像をクリックすると周辺地域も表示)。出典:東京都都市整備局

 東京都は2016年度中に策定する事業計画をもとに、水素ステーションをはじめとする主要な設備を建設・運営する民間企業を2017年度に決定する方針だ。オリンピックを開催する1年前の2019年度にはBRTの運行を開始して本番に備える(図3)。さらに大会終了後にはエネルギーマネジメントセンターを設置して、地区内の電力・熱・水素の需要と供給を制御できるようにする。

図3 事業の実施スケジュール。BRT:Bus Rapid Transit(バス高速輸送システム)。出典:東京都都市整備局

 すでにBRTの運行では京成バスが事業者に決まっている。2016年度内にBRTを運行するための新会社を設立したうえで、2018年度に燃料電池バスを調達する計画だ(図4)。2019年度から2系統の路線で1時間あたり最大6便程度を運行する予定で、オリンピックの終了後に路線と便数を増やして輸送能力を高めていく。

図4 BRTで採用する燃料電池バスのイメージ。出典:東京都都市整備局、京成バス
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.