水素が変える未来の火力発電、2030年のCO2排出量を減らす次世代の火力発電ロードマップ(4)(2/3 ページ)

» 2016年06月13日 13時15分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

水素+天然ガスの混焼発電を2020年代に

 水素発電の技術開発は2つの方式で推進していく。1つは水素とLNGを混ぜ合わせて燃料に利用する混焼発電方式で、既設のLNG火力発電所にも適用できる。もう1つは水素だけを燃料に使う専焼発電方式だ。CO2排出量の点では専焼発電のほうがメリットが大きく、新方式のガスタービンの開発も始まっている。

 すでに混焼発電用のガスタービンの開発プロジェクトは着々と進んでいて、2020年までに発電プラントで実証に入る計画だ(図4)。一方の専焼発電に使えるガスタービンは研究開発の段階で、2025年をめどに実証を開始して、2030年代に技術を確立することが目標になっている。

図4 CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)技術と水素発電技術の開発ロードマップ(画像をクリックすると2025年以降も表示)。IGCC:石炭ガス化コンバインドサイクル(複合発電)。出典:資源エネルギー庁

 水素発電の研究開発プロジェクトはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に推進していく。2015年度から2つのプロジェクトを開始した。1つは混焼発電用のガスタービンの研究開発で、大規模な火力発電に適用できる50万kW(キロワット)級の水素混焼プラントを設計する(図5)。

図5 水素+天然ガス混焼ガスタービン発電の研究開発プロジェクト。出典:NEDO

 2016年度にガスタービンの設計・シミュレーションに着手した後、各種の試験を実施して発電設備の詳細設計に入る。水素20%+LNG80%の割合で混焼できる50万kW級のガスタービンの設計を2018年度までに完了する予定だ。

 もう1つのプロジェクトでは地域単位で利用できる小規模な1000kW級のガスタービンを開発する。水素を使った燃料電池と同様に、電力と熱の両方を供給できるコージェネレーション(熱電併給)システムである(図6)。水素100%でも対応可能だ。2016年度にシステムを製造して、2017年度には実証試験を通じて効果を検証する。

図6 水素+天然ガスによるコージェネレーションシステムの実証イメージ(画像をクリックすると拡大)。EMS:エネルギーマネジメントシステム、CGS:コージェネレーションシステム。出典:NEDO

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