バイオマス発電で全国1位、太陽光と風力の勢いも衰えずエネルギー列島2016年版(8)茨城(2/4 ページ)

» 2016年06月14日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

太陽光発電の導入量も全国トップ

 茨城県では固定価格買取制度が始まった2012年度からバイオマス発電設備が順調に拡大してきた。買取制度の認定を受けたバイオマス発電設備の規模は全国で第1位になり、そのうち1割強が運転中だ(図4)。今後さらに運転を開始するバイオマス発電設備が増えて、天候の影響を受けない安定した電力を再生可能エネルギーで大量に供給できる。

図4 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 同様に太陽光発電の導入量でも全国のトップになった。大規模なメガソーラーが続々と運転を開始して、わずか1年間で導入量は2倍に拡大している。太陽光に風力やバイオマスなどを加えると年間の発電量も1位で、茨城県の総世帯数(109万世帯)の5割弱をカバーできる。首都圏に近い立地ながら、再生可能エネルギーによる電力の自給率は群を抜いて高い。

 新しく稼働したメガソーラーの中では、西部の桜川市で2015年12月に運転を開始した「SOLAR ENERGY 真壁 太陽光発電所」の規模が大きい(図5)。農地に囲まれた20万平方メートルの用地に6万7000枚にのぼる太陽光パネルを設置した。発電能力は14.5MWで、年間に1760万kWhの電力を供給できる。

図5 「SOLAR ENERGY 真壁 太陽光発電所」の全景。出典:RYOKI ENERGY

 中部の水戸市では宅地開発に失敗した広大な土地をメガソーラーに転用した。太陽光発電システムを販売するLooop(ループ)が茨城県から開発許可を取得して、13万平方メートルの用地に「春の木ソーラー発電所」を2016年3月から稼働させている(図6)。

図6 「春の木ソーラー発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:Looop

 3つの区画に分かれる用地のうち2つのエリアでは発電中で、3つ目のエリアでも2017年1月に運転を開始する予定だ。太陽光パネルの枚数は合計で3万枚になり、発電能力は8.4MWに達する。年間の発電量は880万kWhを見込んでいる。

 このメガソーラーは環境に配慮した施工法を採用した点が特徴だ。太陽光パネルを設置する架台の基礎をコンクリートで造成する代わりに、土の状態のままスクリュー式の杭を地中に埋設する方法で組み上げた(図7)。

図7 太陽光パネルの設置状態(画像をクリックすると拡大)。出典:Looop

 発電所の周辺には住宅があるため、植林を施して太陽光パネルが見えにくくなる対策をとった。加えて敷地の外周に土を盛って雨水が流れ出ない構造を造り、敷地内には排水管と調整池を設けて、大量の雨が降っても内部で処理できるようになっている。防災対策を徹底させることで、近隣の住民の理解を得る取り組みである。

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