実証プロジェクトに先がけて福岡県は、2015年から「地産地消型グリーン水素ネットワークモデル」の構築を進めてきた。豊田通商や九電テクノシステムズを含む民間企業4社、さらに水素エネルギーの研究開発で先進的な九州大学をメンバーに加えて、再生可能エネルギーから作った水素を貯蔵・活用するためのビジネスモデルを検討した(図4)。その成果が宮田工場の実証プロジェクトにつながっている。
福岡県では「水素エネルギー分野で世界を先導する」という壮大な目標に向けて、さまざまな実証プロジェクトを推進中だ。福岡市にある九州大学の構内では、太陽光や風力発電と組み合わせた水素製造システムが稼働しているほか、燃料電池車や燃料電池システムと連携した実証研究にも取り組んでいる(図5)。
同じ福岡市内の下水処理場では、下水の処理工程で発生するバイオガスから水素を製造する試みを世界で初めて2015年3月に開始した。毎日大量に集まる下水の汚泥を発酵させてバイオガスを作り、バイオガスに含まれる水素を抽出する方式だ(図6)。バイオガスを使うことでCO2フリーの水素になる。1日あたり燃料電池車65台分の水素を製造して、併設の水素ステーションで供給できる体制を構築した。
トヨタグループもCO2フリーの水素を製造・利用する取り組みに積極的だ。神奈川県の横浜市が中心になって推進する風力発電と組み合わせた水素の製造・利用プロジェクトにトヨタ自動車が参画している。このプロジェクトでは風力発電の電力で作ったCO2フリーの水素を近隣の青果市場や物流倉庫まで輸送して、燃料電池フォークリフトに供給する(図7)。
トヨタ自動車は世界に先がけて2014年12月に燃料電池車の「MIRAI」を市場に投入して、国が推進する水素社会の構築に向けて口火を切った。トヨタグループの豊田自動織機は燃料電池フォークリフトの実用化モデルを開発して、2016年3月から関西国際空港で実証プロジェクトを開始している。
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