リチウムイオン電池の高性能化へ突破口、鍵は「燃えない電解液」太陽光(1/2 ページ)

東京大学の山田淳夫教授らによる研究グループは、リチウムイオン電池の高電圧作動を可能にする新しい難燃性電解液を開発した。リチウムイオン電池の作動電圧を現行の3.7Vから4.6Vに高めることができる。高密度かつ安全性を高めた高性能なリチウムイオン電池の実現に大きく貢献する成果だという。

» 2016年07月04日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授と山田裕貴助教らによるグループ(以下、研究グループ)は2016年6月28日、リチウムイオン電池の高電圧作動を可能にする難燃性電解液を開発したと発表した。開発した電解液を用いるとリチウムイオン電池の作動電圧を現在の3.7V(ボルト)から4.6Vまで高められると同時に、安全性の向上にも貢献できるという。物質・材料研究機構の館山佳尚グループリーダー、科学技術振興機構の袖山慶太郎さきがけ研究員らとの共同研究で開発した。

 二次電池に貯蔵されるエネルギー量は、容量と電圧の積で決まる。近年、さまざまな研究や技術改良によってリチウムイオンの“容量”に関しては大きく改良が進んできたが、“電圧”については長期にわたって3.7V程度に留まっており、顕著な技術進展は達成されていない状況にあった。

 一方で自然エネルギーの有効利用や電気自動車の普及を背景に、リチウムイオン電池のさらなる高性能化ニーズは日々高まっている。これに対応するには理論的な限界が見え始めている容量ではなく、高電圧化による性能向上が必要になってくる。具体的には電圧を5V程度にまで引き上げることが期待されているという(図1)。

図1 5V級リチウムイオン電池の作動イメージ 出典:東京大学

 では、リチウムイオン電池の高電圧化を図るためにはどうすればよいのか。1つの方法が電極の改良である。従来の材料よりも高い電圧を発生する新規正極材料の研究開発が活発に行われており、さまざまな5V級正極材料が提案されている。しかし、これらを実際に使用した高電圧リチウムイオン電池の安定な充電・放電は達成されていない。研究グループによればその最大の原因は、高電圧に耐え得る”電解液”が未開発であるためだという。

 今回研究グループが発表した難燃性電解液は、同研究グループが2014年に発表した「高濃度電解液」の概念に基づき新たに設計した。特殊な溶媒や添加剤を複数種類用いることなく、商業的に使用されている溶媒1種にリチウム塩1種を高濃度に溶解するという単純な組成で作ることができるという。

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