沖縄に自噴する天然ガスで発電、リゾートホテルに電力と温水を供給電力供給サービス(1/2 ページ)

沖縄県の那覇市にあるリゾートホテルで、地下から噴出する水溶性の天然ガスを利用して電力と温水の供給事業が始まった。従来と比べてホテル内のエネルギー消費量を3割以上も削減できる見込みだ。石油の依存度が高い沖縄でエネルギーを地産地消するメリットは大きい。

» 2016年07月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 沖縄本島の南西部の海岸沿いにある「ロワジールホテル那覇」(運営会社:ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ)には、南国のリゾートホテルには珍しい天然温泉がある(図1)。地下800メートルから噴出する温泉は水溶性の天然ガスを含むため、希少な国産のエネルギーとして活用できる方策を検討してきた。

図1 「ロワジールホテル那覇」の外観。出典:ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ

 ロワジールホテル那覇では沖縄ガスと共同で、ガスコージェネレーション(熱電併給)システムの運用を5月1日に開始した。ホテルの敷地内にあるガス井から気水分離器で温泉水と天然ガスを取り分けて、コージェネレーションシステムで電力と温水を作り出す(図2)。

図2 ホテルの敷地内に設置したガスコージェネレーションシステム(画像をクリックすると拡大)。出典:ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ

 発電機が4基の構成で100kW(キロワット)の電力を供給できる。年間の発電量は76万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して210世帯分に相当する。発電した電力は全量をホテル内で自家消費する予定だ。

 さらに発電時の排熱を利用して、コージェネレーションシステムから温水も供給する(図3)。地下から自噴する天然ガスを使って電力と温水を供給できるようになり、ホテルが消費する1次エネルギー量は従来と比べて32%少なくなる。

図3 ガスコージェネレーションシステムによるエネルギー供給。出典:ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ

 沖縄では電力会社が供給する電力の大半が石油で作られているため、電力の消費に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量が他の地域と比べて多い。ロワジールホテル那覇では天然ガスによる高効率のコージェネレーションへ移行することによって、年間のCO2排出量を313トン削減できる見込みだ。樹齢20年のスギの木が吸収するCO2に換算して2万2000本に相当する。

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