再生可能エネルギーの出力抑制、九州本土で実施の可能性が高まる自然エネルギー(1/3 ページ)

太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入量が拡大したことを理由に、九州電力は離島に続いて本土でも、太陽光や風力発電の出力抑制に備えるよう事業者に要請する方針だ。九州本土では夏の日没後19時台に「点灯ピーク」が発生して、供給力が需要に追いつかない可能性がある。

» 2016年07月25日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 九州電力は火力・バイオマス・太陽光・風力の発電設備を対象に、国の機関が定めた「優先給電ルール」に基づく出力制御の準備に入る。発電事業者に対して出力制御の運用方法を近日中に説明する方針だ。7月21日付けのプレスリリースで明らかにした。

 すでに九州電力は離島の種子島と壱岐で太陽光発電設備に対する出力制御を実施している。新たに九州本土でも出力制御に踏み切ることになれば、太陽光をはじめ風力やバイオマスを利用する発電設備に広く影響が及ぶ。一方で原子力発電は優先給電ルールによって出力を抑制する順番が最も遅い。再生可能エネルギーよりも原子力を優先させるルールの妥当性が改めて問われる。

 九州電力が出力制御を想定している時期は1年間に2度ある。1度目は電力の需要が最も小さくなる春のゴールデンウイークの期間で、今年も5月4日には太陽光発電の増加と減少に対応するために、火力発電の出力を急速に増減する必要に迫られた(図1)。

図1 九州本土の需要と供給力(2016年5月4日、画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 当日の状況を見ると、日中に太陽光発電の供給力が上昇するのに合わせて、火力発電の出力を最低限に抑えて供給力を調整した。日没後に太陽光発電の出力が急減するため、今度は火力発電の出力を一気に高めて供給力を増やす必要がある。状況によっては供給力が需要に追いつかなくなる可能性があり、停電を引き起こしかねない。

 日没後には家庭や企業で照明の点灯が増える。そのために電力の需要が上昇することを九州電力は「点灯ピーク」と呼んでいる。点灯ピークは春よりも夏のほうが大きくなる。真夏の8月が出力制御を想定する2度目の時期だ。九州電力が8月を前に出力制御の準備を急ぐ理由である。

 昨年の8月19日には、点灯ピークが発生した19時台に予備率(需要に対する供給力の余裕度)が3.4%まで低下してしまった(図2)。火力発電の出力増加が間に合わず、揚水発電で供給力を増やしたものの、停電の可能性が生じる予備率3%台を記録した。

図2 19時台に発生する「点灯ピーク」(2015年8月19日、画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 電力広域的運営推進機関が2016年4月に定めた優先給電ルールでは、電力会社が火力発電と揚水発電で供給力を調整したうえで、地域間の電力融通を実施する。それでも供給力が余る場合には、バイオマス、太陽光・風力、最後に原子力・水力・地熱の出力を抑制することになっている(図3)。電力融通は他の地域の状況に左右されるため、現実にはバイオマスや太陽光・風力を制限する対策が必要になる。

図3 「優先給電ルール」による出力抑制の順番。出典:九州電力
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