ガス小売り全面自由化により開かれる3.7兆円市場、動く設備やシステム法制度・規制(2/3 ページ)

» 2016年07月28日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

都市ガスの卸売り市場

 都市ガスの卸売り市場は、熱量ベースで3800億MJ弱、数量ベースで小売市場の約20%に当たる90億立方メートル前後となっている。今後市場は小売り全面自由化が大きな転機となり増加傾向が生まれると予測されている。

 卸売り市場は小売りと異なり自由競争が既に開始されており、一般ガス事業者よりも新規参入者の方が積極的な傾向があり、市場におけるシェアは半数を占めている。特に国際開発帝石や石油資源開発などの国内天然ガス事業者が大きなシェアを握っている。小売り全面自由化後はLNGの輸入量が増加すると見られており、一般ガス事業者、新規参入者ともに卸売りを増やす見込みだが、特に新規参入者の比率は高まると予測する(図2)。

photo 図2 卸売市場における新規参入者のシェア推移(熱量ベース) 出典:富士経済

顧客料金管理システム

 顧客料金管理システム(CIS、Customer Information System)は、顧客が使用したガス料金を効率的に管理するためのシステム。電力やガスの小売りを行うには必ず必要となるシステムで、ガスの新規参入事業者なども新たに購入する必要が生まれてくる。

 提供形態にはパッケージ/テンプレート型、クラウド型、スクラッチ型などがある。一般ガス事業者向けは、顧客数や求める機能など、システムのタイプや規模によって大きく異なるものの、導入するには数百万円〜数億円規模のイニシャルコストと、年間数百万円〜数千万円規模のランニングコストが必要となる。大手(顧客数100万件以上)、準大手(顧客数10万件以上100万件未満)の事業者は既に導入が進んでおり、これらに向けたものは、システムの更新やアップグレード需要などが中心となっている。

 小売り全面自由化後はガス小売事業への新規参入で新規導入が増加する見込み。特に、比較的資金力がある通信会社や電力会社、エネルギー関連会社などが参入した場合、10万件以上の顧客数を想定したCISを導入するケースもあり、市場が伸びるという期待感が生まれている。ただし、電力小売自由化と比べると、今回は新規参入が限定的になると予測されている。一方で、LPガス事業者向けでも、クラウド型などのコスト低減が図れるシステムの需要が増加しており、未導入事業者に対し、いかにクラウド型など導入しやすい提案ができるかが、市場拡大に向けたテーマになるとみられている。

 市場規模については、2016年度が862億円だったのに対し、2017年度は899億円、2020年度は999億円へと拡大する見込みだ。

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