東京電力の対応に小売電気事業者の不満、協定完了は2割強にとどまる:電力供給サービス(2/2 ページ)
問題の原因になっているシステムは「託送業務システム」と呼ばれるものだ。電力会社の送配電部門が家庭や企業に設置したメーターから収集した使用量のデータをとりまとめて、小売電気事業者に通知する役割を果たす。政府の指針では検針日から4営業日以内に通知することが原則になっている。
東京電力の託送業務システムでは4カ所で不具合が発生していて、その影響で電力使用量を迅速に算出できずにデータの通知が遅れている状況だ(図4)。現在も不具合を解消できていないために、これから検針する8月分についても遅延が発生する可能性は大いにある。
図4 託送業務システムで発生している4カ所の不具合(画像をクリックすると拡大)。DB:データベース、MDMS:メーターデータマネジメントシステム。出典:東京電力パワーグリッド
託送業務システムで算出するのは利用者の需要データのほかに、家庭や企業に設置されている発電設備も対象になる。この発電データでも遅延が発生していて、8月2日の時点で6793件にのぼっている(図5)。ただし需要データと比べて対象数が少なく、未通知の件数は徐々に減ってきた。
図5 需要データ(上)と発電データ(下)の未通知件数。出典:東京電力パワーグリッド
一方で需要データに関してはシステムの不具合による問題が広範囲に及ぶため、未通知を解消する作業は困難を極めている。東京電力PGは7月1日に検針した未通知分を詳細に分析して、4通りの個別対策を追加で実施した。
その結果、未通知だった294件のうち228件は問題を解消できたが、66件は7月29日の時点でも解決できていない(図6)。大半は旧型のメーターから新型のスマートメーターに取り替えた情報がシステムに反映できていないことによる。
図6 個別対策による未通知件数の解消状況(7月1日検針分、前回報告は7月19日時点、画像をクリックすると拡大)。DB:データベース、MDMS:メーターデータマネジメントシステム、SW:スイッチング。出典:東京電力パワーグリッド
東京電力PGは4通りの個別対策を前倒しで実施しながら、検針から7営業日以内に電力使用量を通知できる状態を目指す(図7)。特に長期にわたる未通知の原因になっているメーターの取替情報に関しては、検針から2営業日以内に現場で状況を確認してシステムに登録する作業を完了させる方針だ。一連の個別対策を計画・管理する「暫定運行チーム」の人員を従来の9人から一挙に65人に増やして未通知の解消を急ぐ。
図7 検針から7営業日以内の通知を目指した対応策(画像をクリックすると拡大)。DB:データベース、MDMS:メーターデータマネジメントシステム、SM:スマートメーター。出典:東京電力パワーグリッド
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