北海道の水素エネルギー普及計画、2040年までのロードマップ自然エネルギー(1/2 ページ)

太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーの資源に恵まれた北海道で、水素エネルギーの普及を目指す長期的な取り組みが始まる。再生可能エネルギーから作った水素を道内全域に供給できるサプライチェーンを構築する計画だ。2040年までに道外を含めた広域の水素供給体制も実現させる。

» 2016年08月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 広大な土地を有する北海道では再生可能エネルギーが各地域に分布する一方、エネルギーの消費地が都市部に集中するために地産地消がむずかしい。この問題を解決する有効な方法が水素エネルギーの活用だ。再生可能エネルギーで作った水素を貯蔵・輸送できるサプライチェーンを道内に構築して、地域の活性化と産業の育成を目指す(図1)。

図1 水素サプライチェーンの構築イメージ。出典:北海道環境生活部

 北海道庁は構想の実現に向けて「水素サプライチェーン構築ロードマップ」を策定して8月4日に公表した。2040年までに3つのステップに分けて計画を推進する。第1ステップ(STEP1)は2016年から2020年までの5年間で実施する。札幌市などの大消費地を中心に燃料電池のエネファームと燃料電池車の導入を促進しながら、再生可能エネルギーが豊富な地域では水素を地産地消する実証プロジェクトに取り組んでいく(図2)。

図2 STEP1の展開イメージ(画像をクリックすると拡大)。FCV:燃料電池車。出典:北海道環境生活部

 国が2014年に発表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」に合わせて、2030年までにエネファームを北海道の全世帯(240万世帯)の1割に、燃料電池車を9000台に拡大する目標を掲げた。さらにサプライチェーンを完成させる2040年には、道内の全域に水素ステーションを展開する計画だ。その目標に向けて2016年4月に北海道で初めての水素ステーションが室蘭市で稼働した(図3)。

図3 「室蘭市移動式水素ステーション」の外観。出典:室蘭市経済部

 室蘭市を含めて水素エネルギーの実証事業や導入計画が6つの地域で進んでいる。実証事業は西部の苫前町(とままえちょう)で風力発電、中部の鹿追町(しかおいちょう)では乳牛の糞尿から作ったバイオガス、東部の白糠町(しらぬかちょう)では小水力発電を利用して水素を製造する試みだ(図4)。それぞれのプロジェクトには民間の有力企業が参画して、官民一体で取り組んでいく。

図4 水素エネルギーの実証事業と自治体の取り組み。出典:北海道環境生活部
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.