ソニーと組んだ東京電力、「ビジネスモデルを根本から変える挑戦」電力供給サービス(1/2 ページ)

東京電力エナジーパートナーはソニーのグループ会社などと共同で、2つのIoTサービス事業に取り組むと発表した。これまでの「電気を提供する」というビジネスモデルから脱却し、「顧客が求める価値」から逆算した新しい電力サービスを生み出したい考えだ。2つのサービス担当者がその狙いについて語った。

» 2016年08月25日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東京電力エナジーパートナー(東電EP)が、立て続けに2つの発表を行った。1つがソニービジネスソリューション、関電工と共同で実証試験を行う認証型コンセントを使った電源提供サービス「espot」。もう1つがソニーモバイルコミュニケーションズと、スマートホーム分野における新サービスの開発に向けた検討の開始だ。2つの発表の概要は既にお伝えしているが、どちらにも共通するのが「サービス」を志向し、IoT(Internet of Things)の活用を前提としている点だ。

 2016年4月から電力の小売全面自由化が始まり、各社が「どういった電気をいくらで提供するのか」という点に大きな注目が集まった。これまでとは異なり「顧客を奪われる」という新しい市場環境の中で、東電EPは東京電力ホールディングスの中での小売電気事業を担っている。そうした中で「電気の供給」ではなく、「サービス」そして「IoT」に舵を切った新しい2つ取り組みには、どういった狙いがあるのか。

「espotは電力ビジネスの根本を変える挑戦」

 2016年8月23日から東京都内で実証試験を開始したespotは、独自開発の認証機能付きコンセント端末を飲食店や店舗の中に設置する。来店客はこれを専用のプリペイドカードやクレジット決済によって一定時間電源として利用できるというサービスだ(図1)。ローソン、大戸屋など都内36店舗、合計150台を設置して2017年1月9日まで実証を行う。

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図1 設置する認証機能付きのコンセント端末(クリックで拡大)

 espotの狙いについて、東電EP 商品開発室 開発企画グループマネージャーの冨山晶大氏は「これまで電力会社は住宅やビル、工場などに電気を供給するが、そこから先には関与していなかった。一方、最近では電気製品を外出先で利用するニーズが高まっている。そうしたユーザーから見ると、家やオフィスの中では契約した電気を利用できるが、外にはそこら中に電柱が立っているのに、自分が契約した電気を得られる場所はほとんどない。espotはどこでも使える公衆電源を目指しており、こうしたこれまでの電力会社のビジネスモデルを根本から変える挑戦になると考えている」と説明している。

東電EPの冨山氏

 既に飲食店などでは、電源を無料で提供しているところもある。一方、espotは「20分100円」を目安とした有償提供だ。その点について冨山氏は「現在行われている電源の無償提供は、店舗側のサービスとして提供している場合がほとんど。電源目的のみの利用が増えるといった課題も少なくなく、店舗の都合で電源の提供が打ち切られる場合もある。しかしespotの場合は顧客が店舗に料金を支払い、お互いの了解のもとで利用する。これが差別化要因になると考えている」と述べた。

 さらにespotでは1回当たりの使用時間や料金を店舗側で設定できるという特徴がある。回転率を上げたい場合、1回当たりに充電できる時間を短くするといった対応も可能だ。なお、実証試験でespotを導入する大戸屋では、無償で提供しているという。

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