稼働後でも発電量を増やせる、アレイを「詰める」新工法太陽光(2/2 ページ)

» 2016年09月05日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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ピークカット設計

 発電所の環境によって異なるがX-largeを導入すると平均で15〜20%程度のモジュール容量を増やせる見込みだ。しかし、モジュール容量は増えてもPCSには手を加えないため、系統負荷が変わるわけではない。その分、ピークカットによって売電ロスが発生する可能性もあるが、通年の発電量とのバランスを考慮し、ロスが最小限になるように設計するとしている。また、こうしたピークカット設計になることで、発電カーブはよりフラットに近づく(図3)。これにより、X-largeを導入した発電所は、需給バランスの制御が行いやすくなるメリットもあるとしている。

図3 ピークカット設計となることで、発電カーブはフラットに近づく 出典:エクソル

発電所の耐久性向上にも寄与

 X-largeでは、寄せて設置した複数のアレイを全てを貫くように架台を設置する。つまり、前後のアレイをまとめて連結固定することになり、アレイと架台との固定点が増える。結果として、アレイを下から突き上げるような風圧(負負荷方向)に対する強度が高まる。このようにモジュール量や発電量の増加だけでなく、発電所の強度を施工前と同等以上に高められるメリットもあるとしている(図4)。

図4 ピンクと青の部分がX-largeで新たに追加する架台。これによりアレイと架台との固定点が増える 出典:エクソル

改正FIT法で転機を迎える発電所をターゲットに

 FITの開始で大きく拡大した太陽光発電市場だが、2017年4月から改正FIT法が施行されることで、転機を迎えつつある。改正FIT法の大きな特徴として、適切な点検保守や発電量の維持に努め、安全性に関する法令を順守しなければ設備認定が取り消される可能性が明記された。これによりかつては「メンテナンスフリー」といわれた太陽光発電だが、定期的なメンテナンスの実施は事実上ほぼ必須といえる状況になっている。

エクソル 代表取締役社長の鈴木伸一氏

 会見に登壇したエクソル 代表取締役社長の鈴木伸一氏は、改正FIT法が太陽光発電事業者に与える影響について「改正FIT法でポイントとなるのが、既に発電を開始している太陽光発電所の運営事業者が、事前の事業計画にメンテナンスコストを織り込んでいない可能性があるという点だ。発電規模が小さい発電所の場合、採算性が合わなくなり事業継続をあきらめる事業者もいるだろう。こうしたメンテナンスコストをどう確保するかは1つの課題になる」と述べる。

 また、太陽光発電の買取価格が下がっている中で、発電所の設置コストに関する課題も指摘する。「買取価格が24円まで下がり、太陽光発電市場は停滞するという意見もある。しかし、エクソルの調査では24円案件として認定を取得した発電所は7〜7.5GW(ギガワット)程度あり、勢いはそこまで衰えていない。しかし課題となるのは、認定は取得できても発電所に適した土地が減っているという点だ。24円案件の場合、モジュールや架台などのコストは以前より抑えやすくなったが、土地を造成するコストは大きな障壁になる」(鈴木氏)

 今回発表したX-largeは、こうした現在の太陽光発電市場が抱える課題をターゲットに開発したものだ。既に稼働している発電所のモジュールおよび発電量を増やすことができ、さらに狭い土地での発電に適した工法でもある。

 X-largeの価格は、規模・条件によって個別の見積もりとなるが、「買取価格にもよるが、発電事業者側が数年程度で回収できる価格を目安にしたい。24円案件の発電所でも回収できるようにしていく」としている。現在導入している架台の種類などによって、X-largeが適用できない場合もあるが、今後開発を進めて対応範囲の拡大も進める。なお、エクソルでは新規の太陽光発電所のEPCも手掛けているが、こうした新規案件でも施工法にX-largeを提案してく方針だ。

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