課題も多い小水力発電、普及拡大へクリアすべき6項目自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2016年09月27日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

メーカーと事業者がWin-Winになるためには?

 一方、今回の調査で小水力発電事業の事業採算性をシミュレーションした結果、流況など条件によっては、オーダーメイド製品よりも性能で劣る汎用製品の水車を採用した方が、総合的な事業採算が改善する場合もあったとしている(図2)。これは1台のオーダーメイド製品を使用する場合と、3台の汎用品の水車を使う場合を比較したもの。設備の出力は汎用品の方が100kWほど劣るが、低流量時に台数をしぼって運転できるメリットを生かすことで、シミュレーション上ではオーダーメイド製品を利用した場合より事業採算性で上回った。

図2 NEPCが行ったシミュレーションの結果 出典:NEPC

 この結果を受け今回の調査では、事業者側が水車効率の低下をある程度許容し、汎用製品の採用を進めることで、メーカー側に水車・発電機の既成品化・量産化と、価格競争を促す必要があるとしている。しかしこれを実現するためには、中長期的な水車導入市場を確保し、事業者・水車メーカーなど関連するプレイヤーがリスクマネーの低減に向けお互いに協力・努力する必要があると指摘した。

海外製品の採用は拡大する可能性あり

 再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)の開始以降、小水力発電事業の増加により国内メーカーへの水車・発電機の発注量が増加した。それに伴い発注から納入までの調達期間の長期化や価格の高騰が進んでいる。調査ではこうした影響で、事業者側に水車や発電機を海外から調達することへの感心が高まっているとしている。そこで今回の調査では、複数の海外水車メーカーへのヒヤリングおよび海外製品の利用実態について調査した。

 ヒヤリングを行った海外の水車メーカーは、チェコのMavel社とCINK社、ドイツのHydroWatt社、ブルガリアのVaptech社の4社。いずれも日本国内への導入実績がある(図3)。

図3 調査を行った海外メーカーの一覧 出典:NEPC

 ヒヤリングの結果、海外展開への意欲は高く、条件さえ整えば日本への導入も問題ないとする会社が多いとしている。また、成熟した水力発電市場が形成されている欧州では、今回の調査対象以外にも水車メーカーが数多く存在する。一方で、欧州市場は、これ以上の大きな拡大成長は望みにくく、日本を含むアジアへの展開を検討する企業も多いという。また、欧州では日本の水力開発が一時停滞した際にも市場が存在し続けた。そのため、あらゆる規模の水力発電の設計ノウハウを持つ企業が多く、安価で効率の高い水車を量産化できる企業も存在するとした。

 こうした状況を踏まえると、日本国内において海外製品の活用が促進する可能性があるが、課題となるのは維持管理や運用保守の点だ。日本の水車メーカーや電気工事会社の技術者が、海外製品のアフターフォローができる体制を整えて必要がある。また、電力会社との系統連系の基準など、制度面での改善も必要となると指摘した。

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