送電線を運営・管理する東京電力パワーグリッドは、事故発生の5日後に社内の幹部で構成する事故検証委員会を設置して原因の究明を開始した。その後に外部の有識者を交えて11月4日に会合を開き、事故の原因と対策をとりまとめた。
最初に異常が発生した城北線3番を構成する3本のケーブルのうち、1本のケーブルの油圧が事故直後に低下していることが判明した(図5)。そのほかの送電線のケーブルでは異常が発生する前に油圧が低下していて、火災によって油が漏れ出した可能性が大きい。
いずれのケーブルも「OF(Oil-Filled)ケーブル」と呼ぶ古いタイプの電線で、中心部に油を流す通路がある(図6)。電気を通す導体の周囲に絶縁用の紙が巻かれていて、その紙に油をしみこませる構造になっている。この油に何らかの原因で引火して火災が発生したものと考えられる。
現在の東京電力の送電線には、新しいタイプの「CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース:Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath)ケーブル」が多く使われている(図7)。耐熱性に優れたポリエチレンを絶縁体に使っていて、OFケーブルのように内部に油を流す必要がなく、ケーブルが燃えて火災を引き起こす可能性は低い。
ところが東京電力の管内にある8829km(キロメートル)に及ぶ送電ケーブルのうち、いまだに2割弱の1543kmが古いOFケーブルのままになっている(図8)。特に電圧の高い275kV(キロボルト)の送電線では6割近くがOFケーブルである。大半は敷設から35年以上を経過している。老朽化した送電線が大量に残っているため、同様の事故が再発する不安はぬぐえない。
火災事故の原因になったとみられる城北線3番に対しては、1カ月前の巡視で設備の状況を確認していた。4カ月前にはケーブルや油圧の定期点検も実施済みだ(図9)。それでも火災が発生してしまった。
東京電力パワーグリッドは事故の翌日と翌々日にかけて、類似の設備と重要な送電ルートの追加点検を実施したが、異常は見つからなかった。不安の残る古いOFケーブルから新しいCVケーブルへ早急に交換して事故の再発を防ぐことが望まれる。
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