バイオマス発電の燃料は海外から、パームヤシ殻で14万世帯分の電力を作る:自然エネルギー(2/2 ページ)
イーレックスは再生可能エネルギーによる電力の小売事業を拡大するために、発電量が安定しているバイオマス発電所の開発を急ピッチで進めている。すでに2013年から高知県の高知市で木質バイオマス発電所を運転しているほか、大分県の佐伯市で2016年11月中に木質バイオマス発電所の運転を開始する予定だ(図3)。2カ所の発電能力は30MWと50MWで、いずれも港に近い立地を生かしてPKSを燃料に使う。
図3 「イーレックスニューエナジー佐伯発電所」の全景。出典:イーレックス
新たに豊前市で始まったプロジェクトに加えて、岩手県の大船渡市でも同規模の75MWの木質バイオマス発電所を建設することが決まっている(図4)。太平洋セメントと共同で、港に隣接するセメント工場の構内に建設する。PKSを燃料に使って、運転開始もほぼ同時期の2019年秋を予定している。
図4 イーレックスのバイオマス発電プロジェクト(画像をクリックすると拡大)。出典:イーレックス
さらに2件の新規プロジェクトを計画中で、4年後の2020年にはバイオマス発電の規模が350MWを超える見通しだ。電力会社の発送電分離が始まる2020年4月に向けて、バイオマス発電による電力を含めて小売事業の規模を1000億円に拡大する中期経営計画を推進していく(図5)。
図5 バイオマス発電事業と電力小売事業の拡大計画(画像をクリックすると拡大)。出典:イーレックス
一方で豊前市のプロジェクトに共同で参画する九電みらいエナジーも九州地域で再生可能エネルギーの発電設備を拡大中だ。これまでに10カ所のメガソーラーと1カ所の地熱発電所を稼働させたほか、子会社が風力発電所とバイオマス発電所を1カ所ずつ運営している(図6)。合計13カ所の発電能力は112MWに達する。新たに佐賀県の唐津市で28MWの風力発電所を建設する計画も進めている。
図6 九電みらいエナジーの発電所。出典:九電みらいエナジー
九電みらいエナジーは2016年4月から東京電力の管内で小売事業を始めたが、九州では小売事業に参入しないで再生可能エネルギーの発電事業に注力する。豊前市の木質バイオマス発電所の電力は九州電力に供給する。
- 岩手県に国内最大級のバイオマス発電所、地域雇用と11万世帯分の電力を生む
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県南部の大船渡市に、太平洋セメントとイーレックスが国内最大級となる出力75MWのバイオマス発電所を建設する。被災した太平洋セメントの工場内に建設するもので、2019年秋から年間11万世帯分の電力を発電する見込みだ。発電事業の開始に伴い地元から従業員を採用するなど、復興を進める東北経済の活性化にも寄与する。
- 国内最大級の木質バイオマス発電所、北海道で2020年に運転開始へ
北海道の南部に広がる室蘭市の臨海工業地帯に木質バイオマス発電所を建設する計画が決まった。東燃ゼネラル石油の遊休地で2017年に着工、2020年の春に運転を開始する予定だ。発電能力は75MWに達して、木質バイオマス発電所では国内で最大の規模になる。
- 地熱発電に使わない熱水から8000世帯分の電力、2018年2月に供給開始
九州電力グループが鹿児島県の指宿市で稼働中の地熱発電所に新しい設備を建設する。これまで発電に利用していなかった熱水を使って、水よりも沸点の低い媒体を蒸発させて発電する計画だ。2018年2月に運転を開始する予定で、一般家庭の8000世帯分に相当する電力を供給できる。
- 玄界灘の風で大型の風車を回す、九州電力グループが風力発電計画に着手
佐賀県の北部にある海沿いの山の上に、九州電力グループが風力発電所を建設する計画を開始した。高さが100メートルを超える大型の風車8基程度を設置して最大で28MWの電力を供給する。建設前の環境影響評価の手続きを進めて、順調に行けば2020年までに運転を開始できる見通しだ。
- 潮流発電で世界最大級、五島列島の海底で2019年に実証運転
海洋の再生可能エネルギーとして注目を集める潮流発電の実用化プロジェクトが国内で始まる。長崎県・五島列島の海底に、直径16メートルのタービンを備えた潮流発電機を設置する予定だ。発電能力は1基で2MWに達する。2019年に実証運転を開始して、潮流発電の実用化を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.