委員会は東京電力EPの相場操縦に関して、影響の大きさを次のように指摘している。「東京電力エナジーパートナーのように多くの電源を確保する事業者が、このような行為を行うことは、他の事業者がスポット市場から必要な供給力を適正な価格で調達し、小売市場に新規参入すること又は小売市場において事業を維持・拡大することを阻害するものであり、電気事業の健全な発達を害するものとも判断しました。」
東京電力グループは電力業界で最大の事業規模を誇るリーディングカンパニーである。福島第一原子力発電所の事故を起こして現在は国の管理下にあるとはいえ、政府が進める電力システム改革を率先して実行する立場にある。その意気込みを示すため、2020年4月に実施する予定の「発送電分離」に先がけて、2016年4月から発電・送配電・小売の3事業会社に分割する新体制へ移行した(図8)。
発送電分離は電力会社の送配電事業を発電・小売事業から分離することである。多数の事業者が送配電ネットワークを平等に利用しながら、発電・小売事業で健全な競争状態を維持できるようにすることが目的だ(図9)。電力会社は発送電分離後も発電・小売事業を一体に運営することが可能だが、東京電力は両者を分離して競争を加速させる方向に動き出していた。
それにもかかわらず、小売事業会社の東京電力EPがグループ内の強大な発電能力を背景に不当な相場操縦を実行していた。発電事業と小売事業の分離は形式だけで、現実には一体で事業を運営していたのと変わらない状況だ。
政府が発送電分離によって中立性を維持しようと考えている対象は、あくまでも送配電事業にかかわる業務だけである(図10)。電力会社の発電事業と小売事業を一体に運営することに関しては認める方向だ。
しかし東京電力EPの相場操縦のような問題が起こると、改めて発電事業と小売事業の明確な分離を検討する必要が出てくる。それほどに大きな課題を浮き彫りにした不適切な行為と言える。監督官庁の経済産業省は今回の問題を機に、発送電分離の実施形態を早急に見直すべきである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.