燃料電池とCO2フリー水素が全国へ、空港にホテルに競馬場にも2017年のエネルギートレンド(3)(2/4 ページ)

» 2017年01月11日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

北海道の高原でバイオガスから水素を作る

 水素のサプライチェーンを構築する取り組みは大都市だけにとどまらない。北海道では都市部と農山村の合計5カ所で水素サプライチェーンの構築プロジェクトが進んでいる。エネルギーの大消費地である札幌市と室蘭市に加えて、再生可能エネルギーが豊富な3つの町でCO2フリーの水素を製造して地産地消を推進していく(図5)。

図5 北海道における水素サプライチェーンの展開イメージ(2020年を想定、画像をクリックすると拡大)。出典:北海道環境生活部

 そのうちの1つ、鹿追町(しかおいちょう)は酪農が盛んな高原の町である。町内では乳牛のふん尿からバイオガスを生成して電力と温水を供給する設備が稼働中だ。新たに環境省から実証事業の採択を受けて、バイオガスから水素ガスを製造できる装置も導入する(図6)。

図6 ふん尿由来の水素を活用した水素サプライチェーンの実証事業イメージ。出典:鹿島建設

 バイオガスから製造した水素ガスはボンベに格納して、町内の畜産農家や隣接する帯広市の競馬場の燃料電池で利用できるようにする構想だ。CO2フリーの水素で再生可能エネルギーの地産地消を促進することにより、農業の活性化と低炭素社会の拡大を目指す。

 北海道には太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーの資源が大量にある。ところが再生可能エネルギーで電力を作っても、道内の需要が限られているうえに送配電ネットワークが十分に整備できていない。余剰の電力から水素を製造して貯蔵・輸送できれば、道内だけではなく首都圏にも再生可能エネルギーを供給できる。北海道の新たな産業として発展する期待が持てる。

 太陽光発電や水力発電の導入量が多い山梨県でも、CO2フリーの水素を製造するプロジェクトが動き出した。山梨県と東京電力が共同で運営する「米倉山(こめくらやま)太陽光発電所」の電力を使って水素を製造する(図7)。さらに気体の水素を取り込む特性がある水素吸蔵合金などを利用して、製造した水素を貯蔵・輸送できる設備も整える。

図7 山梨県で実施するCO2フリー水素の技術開発プロジェクト(画像をクリックすると拡大)。出典:山梨県ほか

 水素を製造・貯蔵・輸送する体制を整備したうえで、2020年度から県内の工場やスポーツ施設を対象に水素エネルギーを地産地消する社会実証に取り組む方針だ。太陽光による不安定な電力を使って水素を製造すれば、電力の安定供給とCO2の削減を両立できる。

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