豪州産のCO2フリー水素を東京オリンピックに、輸送船を建造・運航へ自然エネルギー(1/2 ページ)

日本とオーストラリア(豪州)の政府が共同でCO2フリー水素の製造・輸送事業を推進する。オーストラリア国内で未利用の状態にある石炭から水素を製造して日本まで輸送する計画だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックで豪州産のCO2フリー水素を利用可能にする。

» 2017年01月17日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 液化水素運搬船の航路計画。出典:国土交通省

 国土交通省の海事局とオーストラリアの海事安全局は液化水素を輸送する専用タンカーの安全基準に関して、1月11日に確認作業を完了した。これにより2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて液化水素運搬船を建造・運航できる環境が整った(図1)。

 両国が推進するプロジェクトはオーストラリアのビクトリア州に大量に存在する褐炭からCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造して、液化した状態で日本までタンカーで輸送する構想だ。褐炭は石炭化の経過年数が短かくて水分が多いために、現地で発電に利用する以外に用途がなかった。

 褐炭を改質して水素を製造する技術が進んできたことから、新たなエネルギー源として注目を集め始めている(図2)。オーストラリアでは褐炭から水素を製造する工程で排出するCO2を回収して、古い天然ガス田に貯留するプロジェクトにも取り組む。

図2 褐炭からCO2フリーの水素を製造・輸送・貯蔵・利用するサプライチェーン。出典:川崎重工業

 日豪の政府は国際海事機関が採択した液化水素タンカーの暫定的な安全基準に従って運搬船の建造を促進する。第1弾として川崎重工業が実証船を建造して2020年に就航する予定だ。すでに川崎重工業は「技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」(略称:HySTRA)を通じて、CO2フリーの水素を海上で輸送するサプライチェーンの実証事業に着手している(図3)。

図3 液化水素タンカーの実証船イメージ。出典:国土交通省、HySTRA

 CO2フリーの水素を製造する方法は大きく分けて2通りある。化石燃料を改質して水素を取り出す方法と、再生可能エネルギーの電力で水を分解して製造する方法だ。加えて大量の水素を輸送する手段の研究開発が進んでいて、主な方法は3種類ある(図4)。このうち日豪を結ぶ水素サプライチェーンの実証プロジェクトでは、マイナス253度の超低温で水素を液化する方法を採用する。

図4 大量の水素を液化して輸送する方法(画像をクリックすると拡大)。出典:内閣府

 川崎重工業はLNG(液化天然ガス)を運搬するタンカーを長年にわたって建造してきた実績がある。ただしLNGはマイナス162度で液化して輸送できる。液化水素はLNGよりも100℃近く低い温度で運搬するために、専用のタンカーを建造するには新たな技術開発や安全基準が必要になる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.