豪州産のCO2フリー水素を東京オリンピックに、輸送船を建造・運航へ自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年01月17日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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神戸市の空港島に受入基地を整備

 日本政府は世界に先がけて水素社会を構築する方針を掲げて2014年に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定した。国を挙げて水素エネルギーの導入と技術開発に取り組む構想だ。当面の目標は2020年の東京オリンピック・パラリンピックで水素エネルギーの活用イメージを世界にアピールすることである(図5)。そのために安価なCO2フリー水素を製造・輸送・利用する技術開発と実証プロジェクトを推進していく。

図5 水素社会を実現するためのロードマップ。出典:内閣府

 オーストラリア産のCO2フリー水素を活用する水素サプライチェーンの構築は重要な施策の1つだ。運搬船の建造を進めるのと合わせて国内の受入体制も整備する必要がある。すでに兵庫県・神戸市の沖合に浮かぶ空港島では、液化水素の荷役・貯蔵設備を建設するプロジェクトが動き出している(図6)。

図6 水素サプライチェーンを構築する神戸空港島(平面図の赤い丸が実証予定地区)。出典:神戸市環境局

 技術研究組合のHySTRAを構成する川崎重工業・岩谷産業・電源開発・シェルジャパンの4社が、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けて受入設備を建設する計画だ。タンカーから液化水素を揚荷・積荷できる基地を神戸空港島に整備して、国内各地に水素を供給できるインフラを構築する。2019年度に試運転を開始して2020年度から実証運転へ移行する予定になっている。

 日本と海外をつないだCO2フリー水素のサプライチェーンは2020年に開始する実証運用を皮切りに、2030年代から商用ベースで大規模に展開する構想だ。2020年の時点では小型の液化水素運搬船を使うが、2025年をめどに大型のタンカーで大量の液化水素を輸送できるようにする(図7)

図7 液化水素運搬船の外観イメージ。小型の内航船(左)と大型のタンカー(右)。出典:川崎重工業

 2030年代の商用段階では6隻のタンカーを運航しながら、海外の製造プラントと国内の受入プラントをそれぞれ3カ所に展開していく。さらに2050年には製造・受入プラントを40カ所ずつに拡大して、発電容量に換算して4000万kW(キロワット)の水素エネルギーを国内で供給できる体制を目指す(図8)。実現すれば日本のエネルギーの生産・利用構造は大きく変わり、CO2排出量も劇的に減る。

図8 水素サプライチェーン展開構想。中段は受入プラント、下段は製造プラント。出典:川崎重工業
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