エジプトにおける再生可能エネルギーの開発の歴史は長い。まずは大規模水力、次いで大規模風力の開発を進めてきた。
「エジプトはナイルの賜物」という言葉があるように、水力発電の歴史はナイル川の歴史と重なっている。
開発の歴史は半世紀を超える。1960年にはナイル川上流部のアスワンに最初の大規模水力発電設備「アスワン第一ダム」(水力発電設備の出力270MW)が開発(図5)。図5ではダムによって形成されたナセル湖が、図中央下にギザギザの水域として写っている。
その後も、「アスワンハイダム」(2100MW、1967年)、「アスワン第二ダム」(270MW、1985年)と続く。1993年時点では国内の総発電量475億kWhのうち、水力で17.9%をまかなう規模となった。その後、2008年まで100MW以下のダムをさらに2つ建設している。
6ポイントをまかなう計画のために必要な水力発電の増強量は、ほぼゼロだ。逆に言えば、大規模水力を開発する余地がほとんど残されていない。
図5 人工衛星から撮影したエジプト国土 国土のうち、東側の約4分の3が写っている。人口の9割以上は南から北に流れるナイル川に沿った低地と、河口部でイチョウの葉のように広がったデルタに住む。いずれも緑色に写っている。左上はエジプト領のシナイ半島、左下は紅海 出典:NASA風力資源の開発プログラムは1993年に始まった。当時から紅海沿岸の風力資源が有望なことが分かっていたため、El Zeit湾に5MWのパイロットプラントを建設(図5で紅海が左上のスエズ湾に向かって細くなっている部分)。出力100〜300kWのさまざまなタービンを42基設置したものだ。
その後10年以上かけて、スエズ湾中央部のZaafarana地域で出力545MW(700基)のパイロットプロジェクトを推進した(図6)。政府の計画では2018年までに同地域に1340MWの風力発電所を建設する予定だ。
ここまでエジプトの風力は国営事業(NREA)として進んできた。政府は2014年に固定価格買取制度(FIT)を導入、競争入札制度と組み合わせることで民間の投資を促し始めた。
その結果、風力、太陽光、太陽熱がバランス良く成長すると見込みだとした。太陽光が風力以上に伸びる結果、2030年時点で太陽光の累積導入容量が風力を超え、2040年まで拡大し続ける。
太陽熱発電は2040年以降に急速に大規模化するため、2050年時点では太陽熱、太陽光、風力の順に規模が大きくなる見込みだ(図7)。
フラウンホーファーISEはエジプト以外にもさまざまな国について、LCoEを算出している。ドイツ国内のLCoEの予測については関連記事を参照して欲しい。
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