バイオガス発電で年間1億円の売電収入、下水処理コストを低減自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年01月25日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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下水熱を生かしてミニトマトも栽培中

 2つの施設の整備と運営にかかる事業費は総額で96.5億円にのぼる。ただし売電収入からSPCと愛知県に配分する金額を除いた17.6億円を事業費の一部に充当する契約になっている(図4)。このため県がSPCに支払う事業費は78.9億円で済む予定だ。売電収入は想定を下回る可能性があるが、それに関係なく17.6億円を事業費に充当する契約になっている。

図4 事業費の内訳(契約締結時)。SPC:特別目的会社。出典:愛知県建設部

 さらに売電収入の10%にあたる年間1000万円強の分配金が見込める。発電事業の契約期間は2036年3月までで、合わせて19年2カ月分の約2億円が愛知県の収入になる見通しだ。もし汚泥の処理量が契約で定めた範囲から逸脱した場合には、県からSPCに対する支払額を改定して調整する。

 豊川浄化センターは43万平方メートルの広大な敷地の中に、下水を処理して汚泥を作る水再生ゾーンをはじめ、新たにPFI事業で建設した汚泥処理ゾーンとバイオガス利活用ゾーン、さらに太陽光発電ゾーンと植物工場ゾーンがある(図5)。

図5 「豊川浄化センター」の施設配置。出典:愛知県東三河建設事務所

 太陽光発電事業は3万平方メートルの用地を事業者に貸し付ける方式で実施している(図6)。JFEエンジニアリングなどが出資する「T&Jエコエナジー」が事業者になって2016年4月に運転を開始した。発電能力は2MWで、年間に257万kWhの電力を供給できる見込みだ。愛知県には年額で600万円の土地貸付料が入る。

図6 太陽光発電設備の全景。出典:愛知県建設部

 一方の植物工場では下水を処理した後の放流水の熱を暖房に利用して、温室の中で年間を通じてミニトマトを栽培する(図7)。民間企業と生産者を中心に、愛知県と豊橋市、農業協同組合などがコンソーシアムを構成して、2015年度から取り組んでいる。下水の処理熱を生かして化石燃料の使用量を削減する新しい農業のモデル事業である。

図7 下水熱を活用したミニトマト栽培事業。出典:愛知県建設部

 このように1カ所の下水処理場の構内でバイオガス発電、太陽光発電、下水熱による暖房まで実施するケースは全国でも珍しい。下水処理場で再生可能エネルギーを最大限に活用する先進的な事例になる。

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