住宅を中心に太陽光発電が活発な愛知県で、廃棄物を利用したバイオガス発電の取り組みが広がってきた。生ゴミや下水からバイオガスを生成して、電力と熱を供給するのと同時に肥料やCO2を農作物の栽培に利用する。太平洋沿岸の豊富な日射量を生かして水上式のメガソーラーも運転を開始した。
愛知県には大きな半島が2つあって、地域の資源を生かした再生可能エネルギーの導入プロジェクトが活発に進んでいる。西側の知多半島の根元に位置する大府市(おおぶし)では、廃棄物を利用したバイオガス発電設備が2015年7月に運転を開始した(図1)。地元で長年にわたって廃棄物の処理事業を営むオオブユニティが運営する。
バイオガスの元になる廃棄物は家庭などから排出する生ごみを中心に、1日あたり70トンにものぼる。さまざまな成分が廃棄物の中に混在しているため、リサイクルがむずかしく、従来は焼却して処分する方法しかなかった。新たに導入した設備ではメタン生成菌を使って廃棄物を発酵させて、燃料のバイオガスを作ることができる(図2)。
バイオガスによる発電能力は625kW(キロワット)で、年間に500万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると1400世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に約2億円の収入を得られる見込みだ。総事業費は25億円かかったが、20年間の売電収入で回収できる。
廃棄物を発酵させてバイオガスを回収した後の残りかすも捨てずに活用する。残りかすは食品の栄養分を含んでいるため、堆肥に加工して農作物の栽培に生かす。こうした循環型のサイクルで廃棄物の処分量を削減しながら、周辺の自治体とも連携してエネルギーの地産地消を推進していく方針だ。
もう一方の渥美半島の根元に広がる豊川市では、下水処理場でバイオガス発電に取り組んでいる。下水の処理工程で発生する汚泥を主体に、廃棄物をメタン発酵させてバイオガスを生成する手法は同様である。加えて発電時に排出する熱とCO2(二酸化炭素)を、隣接する植物工場と海藻工場に供給する実証試験を進めてきた(図3)。
エネルギーと資源の循環システムを構築する「豊川バイオマスパーク構想」の一環で、豊橋技術科学大学が国や愛知県の支援を受けて2011〜2015年度の5年間をかけたプロジェクトである。この実証試験に続いて本格的なバイオガス発電設備を導入する計画も始まっている。
水処理プラントメーカーのメタウォーターが中心になって、下水処理場を運営する愛知県からバイオガスを調達して発電事業を展開する。発電設備の規模は不明だが、2016年度内に運転を開始する予定だ。固定価格買取制度による20年間の売電収入は約23億円を見込んでいて、そのうち10%の2.3億円を愛知県に配分する契約を結んだ。
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