日本でスマートメーターを導入する目的は主に3つある(図5)。第1に電力会社の検針作業を省力化できて、契約変更にも素早く対応できる。第2に電力の使用状況を需要家ごとに把握して節電対策などに生かす。第3の目的として電力の需給状況が厳しくなった時には、スマートメーターを通じて電力の使用量を抑制することも可能だ。
電力会社の検針作業を省力化するためには、すべての需要家にスマートメーターを設置することが望ましい。電力会社の多くは小売の全面自由化が始まる2016年度からスマートメーターの導入台数を増やし始めた(図6)。2018年度までの3年間に10社の合計で毎年1200万台以上を設置する計画だ。
ただし東京電力では全面自由化を前にスマートメーターの設置工事の手配に問題が発生して、計画どおりに導入台数を増やせていない。本来ならば2016年度末までに1080万台の設置を完了する予定だったが、11月末の時点で863万台にとどまっている。残り4カ月で200万台以上を導入する必要がある。
電力会社はスマートメーターで測定した需要家ごとの使用量を集計して、小売電気事業者(新電力)に通知する役割を担っている(図7)。その計算に利用する「託送業務システム」でも東京電力は不具合を起こしてしまった。小売電気事業者が電気料金を請求できない事態になり、今なお問題は解消できていない。
その一方でスマートメーターの導入が進んでいる関西電力は家庭向けに新たなサービスの提供を開始した。スマートメーターが計測する30分ごとの電力使用量をもとに、1日の生活リズムを判定するサービスだ(図8)。はたして実用性は未知数だが、電力会社にとっては需要家をつなぎ止めるためにサービスの充実が欠かせない。
新電力のあいだでも家庭を対象にした生活支援サービスに力を入れる動きが始まっている。福岡県みやま市が出資する新電力の「みやまスマートエネルギー」では利用者にタブレット端末を提供して、電力の使用量の見える化をはじめ、健康サービスや通販サービスを実施中だ(図9)。
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