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» 2017年02月02日 09時00分 公開

3分で分かるこれからの電力業界(6):電力×IT・デジタル――エネルギービジネスへのIoT活用 (2/3)

[江田健二,スマートジャパン]

事例紹介:IT・デジタル活用のビジネスを推進する企業――エネルギーマネジメントシステムで省エネを支援する「テス・エンジニアリング」

 電力とIoTを結び付けた事業を展開している企業に「テス・エンジニアリング株式会社」があります。同社は、省エネ対策、環境対策、コストダウン対策専門のエンジニアリング会社で、小売電気事業や太陽光発電事業なども含め、幅広い事業を展開しています。

 昨今、省エネルギー、特にCO2を削減してエネルギーを上手に管理する仕組みが求められています。同社は、これまでコージェネレーションシステム(熱源から電力と熱を生産して供給するシステム)を中心とした24時間監視システムにおいて電気、温水、蒸気、空気など、さまざまな要素の“見える化”を行ってきました。

 同社が提供するエネルギーマネジメントシステム「TESS WebView」は、クラウドサーバにデータを保存し、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末からいつでもどこからでも設備の稼働状況を遠隔で確認できます。加えて、レポートや警報が自動配信されるので、電力の使用状況が簡単に確認でき、異常も即時発見できるようになります。

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 テス・エンジニアリング社やリミックスポイント社は、2016年度の「SIIエネマネ事業者」として採択されています。SIIエネマネ事業者とは、エネルギー管理支援サービスを通じて工場・事業場などの省エネルギー事業を支援する者として、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録された事業者をいいます。

 また省エネの補助金で有名な「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」というものがあるのですが、この補助金についても、同社のような「エネマネ事業者」の提供するエネルギーマネジメントシステムを活用することで、より一層の効率的・効果的な省エネルギーを実施する事業については、補助率は最大2分の1と経済的な見返りが大きくなります。

 このように、IoTは省エネなどのエネルギーマネジメントで活用することができ、かつ一部の補助金においては条件が有利になる場合もあります。補助金は国の予算が資金の土台となっており、政府としても今後積極的に進めていきたい産業と捉えていることがうかがえます。

IoTと電力関連サービスの今後

 今後スマートメーターの大規模導入により(国は2024年度までに全家庭でスマートメーターを設置する目標を掲げている)、電力とIoTの動きはさらに加速すると思われます。スマートメーターを利用している人数が少ないと、新電力会社としてもサービスを展開しづらいですが、今後はそういった懸念も払しょくされていくでしょう。

 IoTと電力サービスの連動は、電力事業だけではなく全く別のサービスと結びつけられるポテンシャルがあります。つまり、これまでの「エネルギー利用の最適化」というエネルギー分野に限定された取り組みから、「人々の暮らし」にフォーカスし、需要者、消費者側からのニーズを出発点とした多様な価値やソリューションの提供へと拡大していきます。

 その1つとして、「高齢者の見守りサービス」があります。得られた電力使用データから高齢者の生活パターン異常を検知することにより、独居老人などの高齢者の異常を早期に発見し、応急処置や搬送サービスを提供することができるというものです。

 また、電力の利用状況から「宅配の効率化」も期待できます。在宅しているときと不在の際の電力利用データを中央管理センターで分析し、そこから導き出した効果的な宅配ルートで配達するといったものです。

 ほかにも「ホームセキュリティサービス」といったものも考えられます。電力利用のデータからリアルタイムで宅内への侵入者を検知し、宅内にある家電などを適切に制御。侵入の防止や警備会社への迅速な連絡を行うサービスです。

 スマートメーターのほかにも、「スマートハウス」といったものも、今後は増えていくでしょう。スマートハウスとは、ITを使って家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅のことです。太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器、家電などをコントロールしエネルギーマネジメントを行うことで、省エネを実現します。

 こうしたスマートハウスが実現すると、「屋内環境コンシェルジュ」といったサービスも可能となります。電力利用データを分析することで、さらなる省エネ機器、エネルギーを「創る・貯める・減らす」機器導入の有効性やリフォームの必要性を診断し、最適なソリューションを提案するサービスです。

 また、機器の修理サービスに関しては、電力データから家電などの異常を検知し、故障前のメンテナンスサービスや故障時の部品を事前準備するような内容が考えられます。ここでは、保険ビジネスとのタイアップも期待できます。

 電力利用のパターンは十人十色です。そこにIoTビジネスのチャンスがあり、人の行動に伴うエネルギー利用に関する情報などを基に、よりパーソナライズされたサービスも増えていくことが予想されます。

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