デンマークのヴェスタス社と三菱重工業の合弁による洋上風力発電機メーカーが9MWの風力発電機の連続運転に成功した。すでに商品化した8MW機を改良したモデルで、24時間を通してほぼ100%の出力で発電を続けた。日本の一般的な家庭の2万1600世帯分に相当する電力だ。
デンマークに本拠を置く洋上風力発電機メーカーのMHI Vestas Offshore Wind(略称:MHIヴェスタス)は、世界最高出力の9MW(メガワット)の洋上風力発電機を24時間にわたって連続運転させた(図1)。2016年12月1日にデンマークの国立テストセンターで実証したことを、MHIヴェスタスの親会社である三菱重工業(MHI)とデンマークのヴェスタス社が公表した。
この洋上風力発電機はMHIヴェスタスの主力製品である8MW機の「V164-8.0MW」を改良して出力を9MWに高めた。テストセンターでは24時間にわたって9MWの出力を発揮して、発電量は21万5999kWh(キロワット時)を記録した。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)はほぼ100%である。日本の家庭が1日に使用する電力量(10kWh)に換算すると2万1600世帯分に相当する。
テストセンターは北海に面したデンマーク北部の陸上にあり、デンマーク工科大学が運営している(図2)。センターの構内に7基の洋上風力発電機を設置して、各メーカーのエンジニアが発電機を改良しながら性能を評価できる。現在はMHIヴェスタスを含めて欧米の洋上風力発電機メーカー4社が合計7基のテストを実施中だ。
テスト中の7基のうちMHIヴェスタスの9MW機が出力・サイズともに最も大きい。風車の羽根(ローター)の回転直径は164メートルに達する。日本の福島沖で実証運転中の7MW機は回転直径が167メートルで少し大きい(図3)。MHSヴェスタスの親会社である三菱重工業が開発した浮体式の洋上風力発電機だが、設置条件に恵まれたヨーロッパでは同程度の大きさの風車で出力を9MWまで高めることができた。
MHSヴェスタスは8MW機の上位モデルとして9MW機を市場に投入する計画だ。8MW機は2014年に受注を開始して、現在までにヨーロッパの7つの洋上風力発電プロジェクトで採用が決まった(図4)。受注数は237基にのぼり、発電能力を合計すると1896MWに達している。
このうち最初に運転を開始するのは、イギリスのリバプール市の沖合に建設した「バーボ・バンク洋上風力拡張プロジェクト」である。32基の8MW機を洋上に設置して、発電能力は258MWになる(図5)。2016年12月に風力発電機の設置作業を完了した。2017年3月までに32基が全面運転を開始する予定だ。
MHSヴェスタスが9MW機を製品化できると、8MW機と同程度の建設費と設置スペースで洋上風力発電の規模を拡大することが可能になる。ヨーロッパでは陸上・洋上ともに風力発電のコストが急速に低下して、各国で大規模な風力発電所の建設プロジェクトが拡大中だ。その効果が日本にも波及することを期待したい。
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