国産バイオ燃料計画が前進、58億円のプラント建設計画に道筋自然エネルギー

国産のバイオ資源を原料に、航空機や自動車で利用できるバイオ燃料を製造する「国産バイオ燃料計画」が前進した。計画に参画するユーグレナと千代田化工建設が、製造実証プラントの建設に向けた契約を締結。2018年10月までに完成する予定だ。バイオ燃料の2020年までの実用化に向け、製造面での体制整備が整った。

» 2017年02月14日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 ユーグレナをはじめとする国内企業連合が進める「国産バイオ燃料計画」が前進した。ユーグレナはと千代田化工建設は、横浜市の京浜臨海部におけるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設工事等請負契約を2017年2月10日に締結。2019年前半に予定しているバイオジェット・ディーゼル燃料の生産開始に向け、2017年6月からプラント建設工事がスタートする。

 国産バイオ燃料計画は、ユーグレナが開発を進めている藻類の微生物「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」などを原料とするバイオ燃料を、2020年までに実用化することを目的としたプロジェクトだ。ユーグレナ、横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、全日本空輸が共同で、2015年12月に計画を発表した。

 この計画の中核を担うのが、バイオ燃料の製造実証プラントだ。旭硝子の京浜工場内(横浜市鶴見区)の約7787.6平方メートルの土地を借り受けて建設する(図1)。今回の契約では2017年6月から着工し、完成期日は2018年10月31日までとなっている。ユーグレナのプラント建設における投資額は58億円で、同社は契約金額を含む投資総額の全てを既に公募増資や手元資金で確保した。

図1 製造実証プラントの完成イメージ。1.事務棟、2.反応装置棟、3.用役設備 4.貯蔵タンク、5.出荷場(クリックで拡大) 出典:ユーグレナ

 計画では製造実証プラントは日産5バレル(約800リットル)、年間125キロリットルのバイオ燃料を製造できる予定だ。バイオ燃料の他、バイオケロシン、バイオナフサなども製造する。計画に参画する全日本空輸は製造したバイオ燃料を航空機に使用し、CO2排出量の削減を目指す。航空機業界では世界的にCO2削減に向けた規制の強化が進んでいる。そのため、世界的に生物由来の航空機向けバイオ燃料の実用に向けた動きが加速している背景がある。また、2014年からユーグレナとバイオディーゼル燃料の共同研究を進めているいすゞ自動車も、製造したバイオ燃料をバスなどに利用していく計画だ。

 ユーグレナは今回実証プラントの建設の計画が前進したことで、「2020年までの実用化に向け、製造面での体制整備は完了した」としている。実証プラントの運用に関しては、運用に必要な人材がユーグレナに参画した他、運用人員の採用も順調に進んでいるという。

 ユーグレナは2016年9月に三重県多気町に国内最大級の燃料用微細藻類培養プールを建設するプロジェクトを公表し、原料の調達体制の強化も推進している。同計画ではユーグレナが開発するミドリムシ以外の原料も活用する方針で、その調達は全て日本国内で行う予定である。こうした原料の調達については、伊藤忠エネクスが担当しており、現在も原料調達に関する協議・調査を実施中だ。この他、バイオ燃料の実用化に向けた環境整備も全日本空輸やいすゞ自動車と進めているとした(図2)。

図2 国産バイオ燃料計画のロードマップ(クリックで拡大) 出典:ユーグレナ

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