脱原発都市を宣言した福島県の南相馬市で再生可能エネルギーの導入プロジェクトが着々と進んでいる。発電能力32MWのメガソーラーの建設工事が沿岸部の市有地で始まった。2018年12月に運転を開始して、1万世帯分を超える電力を供給できる。市内では59MWのメガソーラーも建設中だ。
南相馬市の太平洋沿岸にある広大な土地にメガソーラーを建設する計画が動き出した。東日本大震災で甚大な被害を受けた「原町(はらまち)東地区」にある46万平方メートルにのぼる市有地が対象だ(図1)。住友商事が設立した特別目的会社(SPC)の「ソーラーパワー南相馬・原町」が市から土地を借り受けて太陽光発電事業に取り組む。
発電能力は32.3MW(メガワット)で、すでに工事を開始した。運転開始は2018年12月を予定している。最近のメガソーラーでは設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を15%で想定できるため、年間の発電量は4240万kWh(キロワット時)に達する見通しだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1800世帯分に相当する。南相馬市の総世帯数(2万6000世帯)の45%に匹敵する電力になる。
総事業費は130億円を見込んでいる。みずほ銀行がSPCの太陽光発電事業を対象にプロジェクトファイナンスを組成して資金を調達した。さらに東芝が太陽光発電設備を供給して、大成建設が施工を担当する。有力企業4社が協力する体制で、南相馬市の被災地を再生可能エネルギーの拠点として復興させるプロジェクトである。
4社は原町東地区から北へ2キロメートほどの沿岸部でも、総事業費220億円をかけて巨大なメガソーラーを建設中だ(図2)。2つの地区に分かれた106万平方メートルの土地に、発電能力59.9MWのメガソーラーを稼働させる。ひと足早く2018年3月に運転を開始する予定で、一般家庭の2万2000世帯分に相当する電力を供給できる。建設中の2つのメガソーラーを合わせると、南相馬市の全世帯が消費する電力量を上回る。
南相馬市の太平洋沿岸部は津波による甚大な被害を受けた。メガソーラーを建設する市有地は、いずれも被災した地域にある。しかも事故を起こした福島第一原子力発電所から30キロメートル圏内に入っているため、一時は「緊急時避難準備区域」にも指定された(図3)。
復興に向けて住宅地や農地を安全なエリアに移転する一方、被災した土地を市が取得して再生可能エネルギーの導入拠点などに転換を進めている(図4)。太陽光発電に加えて大規模な風力発電所を建設する計画もある。
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