南相馬市は震災から4年が経過した2015年3月に、世界に向けて「脱原発都市」を宣言した。原子力災害を二度と起こさないために、原子力に依存しない街づくりを推進する。その施策の柱が再生可能エネルギーの導入量を増やして、市内で消費する電力の自給率を100%以上に高めることだ(図5)。
震災直後の2012年度には電力消費量のうち5%を再生可能エネルギーで供給できる状態だった。当面の目標として2020年度までに再生可能エネルギーの導入量を10倍以上に拡大して、電力の自給率を64%まで上昇させる。さらに2030年代には自給率が100%を超えて、周辺地域にも再生可能エネルギーの電力を供給できる状態を目指す。
太平洋沿岸部を中心に日射量と風況に恵まれていることから、市内で導入可能な再生可能エネルギーのポテンシャルのうち2割程度を利用できれば、自給率は100%に到達する見込みだ(図6)。建設中の2つのメガソーラーの発電量(1億2000万kWh)だけでも、2020年度の電力消費量の30%近くをカバーできる。
再生可能エネルギーの導入量が拡大することを想定して、東北電力は南相馬市内の変電所に大容量の蓄電池システムを導入した。変電所の構内にある8500平方メートルの用地にリチウムイオン電池を設置して、2016年2月から実証運用に入っている(図7)。
この蓄電池システムには最大で4万kWhの電力を充電できる。周辺地域の太陽光発電や風力発電の出力をもとに、管内の火力発電所と揚水式の水力発電所を蓄電池と組み合わせて需給バランスを調整する試みだ。宮城県の仙台市にある中央給電指令所から遠隔で制御する。
東北電力は蓄電池システムによる再生可能エネルギーの導入拡大効果を約1年間かけて実証する予定で、まもなく結果が明らかになる。蓄電池システムのコスト対効果が明確になれば、東北地方の各地に蓄電池システムを展開して、再生可能エネルギーの拡大に弾みをつけられる。太陽光・風力発電と蓄電池を組み合わせたエネルギーの地産地消が南相馬市から広がっていく。
2020年に電力自給率64%へ、「脱原発都市」を宣言した南相馬市
太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押し
太陽光発電で2万世帯分の電力、再生可能エネルギー100%を目指す南相馬市に
狭い水路でも低コストな発電を可能に、南相馬市で小水力実証を開始
電力を地産地消する動きが加速、原子力に依存しない分散型へ移行Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10