「既存10電力会社」のこれまでとこれから3分で分かるこれからの電力業界(9)(2/3 ページ)

» 2017年03月16日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

事例紹介:付加価値サービスにチャレンジする「中国電力」

 電力自由化により電力事業市場に競争が生まれたことで、自社料金プランの魅力を消費者に積極的に訴求する必要性が高まってきています。こうした状況から既存の10電力会社も他社との差別化戦略を推進しています。ここでは10電力会社の中から中国電力を取り上げ、同社の提供する新たな付加価値サービスをご紹介します。

 中国電力は1951年に設立されて以来、中国地方周辺を中心として電力を供給してきました。市場規模としては4700億円ほどであり、10電力会社の中では6番目に位置します。

 同社は電力自由化への対応として、2016年1月より会員制のWebサービス「ぐっとずっと。クラブ」を開始しました。電力の需要家はこれに入会することにより、各種手続きがオンラインでできるようになるほか、「ぐっとずっと。プラン」「ポイントサービス」「コラボレーションメニュー」などさまざまなオプションサービスを利用できます。

 新たな料金メニューである「ぐっとずっと。プラン」は、ライフスタイルに合わせて選ぶことができる4つのコースが用意されています。電気料金を少しでも安くしたい需要家にお勧めの「スマートコース」、電気をたくさん使う需要家にお勧めの「シンプルコース」、夜間や休日に電気を多く使う需要家に向いている「ナイトホリデーコース」、電化住宅の場合に適している「電化Styleコース」があります。

 ポイントサービスとしては、毎月の電気料金の支払いなどに応じてポイントがたまる「エネルギアポイントサービス」を提供しています。これは地元の活性化につながる商品やサービスなど、好みのものと交換できる「地域密着型」のポイントサービスです。貯まったポイントはポイント数に応じて、地域の「特産品」「商品券」「提携先ポイント」などに交換できる内容です。

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 また、中国地方で事業を展開する異業種企業などとの提携による「コラボレーションメニュー」も提供しています。電力の需要家は好みのメニューを選ぶことで、毎月の電気料金やWeb上での手続きにより貯まったポイントを、提携企業の商品・サービスの交換などに利用できます。

 例えば、プロ野球チーム「広島東洋カープ」とのコラボレーションによる「カープ応援メニュー」もその一つです(第7回「電力×コミュニティー」を参照)。これは広島カープを応援しながら各種特典を受けられるもので、成績や記録達成などでポイントが貯まり、貯まったポイントは観戦チケットや人気のカープグッズ、球場で使用できるクーポンへの交換や、スポンサード・ゲームをはじめとする観戦チケットが当たる抽選への参加に利用できます。

 このように、既存電力会社も電力自由化を契機に、他社との連携や自社のノウハウを活かした多様なサービスを展開するようになってきています。これからも、長年にわたって培われた高度なノウハウが新しいビジネスにつながっていくことが期待されます。

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