石油化学プラントの蒸留工程を50%省エネ、初の商用機が千葉県に省エネ機器

石油化学プラントのエネルギー消費の多くを占めるのが「蒸留操作」という工程だ。この蒸留工程のエネルギー消費量を5割以上削減できるという、東洋エンジニアリングが開発した新しい設備が丸善石油化学の千葉工場に導入された。

» 2017年03月16日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東洋エンジニアリングは2014年に丸善石油化学が受注した省エネルギー型蒸留システム「SUPERHIDIC」の建設工事を完了した。丸善石油化学の千葉県市原市にある工場の蒸留塔に適用した。従来の蒸留塔に比べて、5割を超える省エネルギー化を見込めるという。

 石油精製や石油化学のプラントで用いられている蒸留操作は、蒸留塔の塔底液をリボイラーで加熱すると同時に、塔頂ガスをコンデンサーで冷却する。そのため、プロセス全体のエネルギー消費量の約40%を占めるといわれるほど、非常に多くのエネルギーを必要とする工程だ。

 蒸留操作の省エネルギー化については、これまでにさまざまな技術が提案されてきた。1970年代に内部熱交換型の蒸留塔である「HIDiC」のコンセプトが発表され、大幅な省エネルギー化が期待された。HIDiCは蒸留塔を濃縮部と回収部に分け、その間に圧縮機を設置する。濃縮部の圧力をわずかに上げることにより温度を上昇させ、濃縮部の熱を回収部に移動させてリボイラーに供給することで、大幅な省エネルギーを図るというコンセプトだ。しかし、研究開発が進んだものの、メンテナンス性などに課題があり、商業化には至っていなかった。

 東洋エンジニアリングが開発したSUPERHIDICはHIDiCのコンセプトを継承しつつ、既存の設備の適用を図った。サイド熱交換器に通常のスタブドイン熱交換器を利用し、塔の濃縮部を回収部より下に配置するのが特徴だ。自然循環による熱交換を可能とし、蒸留塔内部熱交換を最適化することで省エネ性を高めている。さらに、通常の装置と同様のメンテナンス性を両立できるメリットもあるという。なお、SUPERHIDICの装置構成については2011年に産業技術総合研究所と共同で特許を取得している。

SUPERHIDICの概要(クリックで拡大) 出典:東洋エンジニアリング

 SUPERHIDICを商用機として導入するのは、今回の丸善石油化学が初となる。東洋エンジニアリングが2014年に受注し、設計・調達・建設・運転助成を実施した。塗料溶剤や合成樹脂の原料となる「メチルエチルケトン」の製造設備の蒸留塔に適用している。

 東洋エンジニアリングでは今回の導入をきっかけに、石油精製・石油化学プラントの運転費低減、省エネニーズに向けてSUPERHIDICの展開を加速させていく方針だ。

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