中国とインドが悟る、石炭に魅力なし自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2017年03月24日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

計画中断から延期まで全ての段階で減少

 石炭火力発電所は大規模な設備であり、ほとんどの国で環境アセスメントを含む政府の認可が必要だ。そのため計画発表から完成まで10年程度の期間が必要な場合もある。

 全ての開発段階の動向を把握しなければ、将来、運転を開始する発電所の予測はできない。

 CoalSwarmは全動向を把握しており、Boom and Bust 2017に結果をまとめた。結論はこうだ。全ての段階で減少傾向にある(図2)。図2では全世界の出力30メガワット(MW)以上の石炭火力発電所の状況を示した。

 例えば2017年1月時点で発表済みの計画規模は出力247.909ギガワット(GW)。これは2016年1月時点の487.261GWの約半分(50.9%)にすぎない。計画段階で出力(施設)が半減した。

 建設に向けた準備もやはり半減(51.1%)し、許認可の取得に至った事例は59.2%まで低下。過去12カ月以内に着工した事例はさらに少なく、38.3%。このため、建設中の発電所は80.6%、過去12カ月以内に完成した発電所は71.2%に減った。

図2 石炭火力発電所の開発動向 2016年1月時点(左)と2017年1月時点(右)を比較した。計画・準備・許認可済の3段階を灰色で、着工・建設中・完成の3段階を赤系統で、延期・閉鎖を緑系統の色で示した。延期以外の全ての段階が減少している。実際に稼働している発電所の規模のみ左側軸で規模(単位:GW)を示した 出典:Boom and Bust 2017に基づき本誌が作図

中国とインドが全世界の動向を決定

 Boom and Bust 2017では全世界の動向を扱っているものの、特に中国とインドに重点を置いている。なぜだろうか。

 二カ国で石炭火力の過半数を占めているからだ(図3)。稼働中の発電所のうち58%を両国が占めている。完成前の比率も高い。準備中の46%、建設中の71%だ。

 だが、延期された発電所の数値を見ると、86%を両国が占めている。つまり、二カ国の動向が全世界の「風向き」を大きく変えたことになる。

図3 中国とインド、両国を除く全世界の状況 準備中の石炭火力発電所の46%、建設中の71%、稼働中の58%を両国が占める 出典:Boom and Bust 2017に基づき本誌が作図

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