もみ殻で精米、熱と電力を100%自給自然エネルギー(1/2 ページ)

米作への依存度が高いミャンマーは、精米時に必要なエネルギーの調達に苦心している。精米後に残る「もみ殻」をバイオマスとして用い、必要な全エネルギーを得る。このような取り組みをヤンマーが始めた。

» 2017年03月27日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 田で収穫した米を乾燥し、精米する。このときに必要な電力や熱が重い負担になる。東南アジアの米どころ、ミャンマーの悩みだ。

 ヤンマーは2017年3月23日、この悩みの解決に結び付く実証実験を本格開始したと発表した*1)。精米後にコメから分離する「もみ殻」を利用して電力と熱を得、精米所に必要なエネルギーを100%まかなう。「これまで系統から購入していた電力を全てまかなうことが可能だ」(ヤンマー)。

 ミャンマーの首都ネピドーに立地する現地企業MAPCO(Myanmar Agribusiness Public Corporation)の精米所敷地内にバイオマスガス化発電実証プラントを完成(図1)。同国最大規模となる設備の運転を開始した。

*1) 環境省「途上国向け低炭素イノベーション創出事業」のうち、平成27年度途上国向け低炭素技術イノベーション創出事業 二次募集採択案件に「籾殻を活用したガス化コージェネレーションシステムの開発」として採択されたもの。事業期間は2015年11月から2018年3月。事業費用のうち、2分の1の補助を環境省から受けている。

図1 バイオマスガス化発電実証プラントの全景 出典:ヤンマー

最大500kWの電力を得る

 実証実験では、1日当たり20トンのもみ殻を利用して、300〜500キロワット(kW)の電力と、450〜660kWの熱を得る。「実証実験を通じて300〜500kWの範囲で最適運転モードを決める他、排水などの環境負担も調査する」(ヤンマー)。発電を安定させることや、燃焼後の残渣(ざんさ)「チャー」を肥料として利用することも目的としている。

 図2にモノや電力、熱の流れを示した。殻をかぶった米(籾)を緑色の矢印で、米を青色で、籾殻をオレンジ色で示した。熱は赤い点線、電力は群青色の点線だ。図1のプラント部分を薄だいだい色の四角で示した。

 精米設備でもみを白米ともみ殻に分離、もみ殻を貯蓄ホッパーに格納する。その後、ガス化コージェネレーション設備に受け入れる。設備内のガス化炉では空気の量を減らしてもみ殻の不完全燃焼を起こす。するとメタン(CH4)、水素(H2)、一酸化炭素(CO)*2)が得られる。蒸し焼きに近い燃焼だ。このガスを設備内のガスエンジンに送り込んで電力と熱を得る。

 電力はもみの乾燥機や精米設備、燃焼後の排水処理設備に送る。熱は乾燥機で使う。

*2) 窒素(N2)とCO2も得られるが、非可燃性であるため、利用しない。

図2 精米所におけるモノと電力・熱のフロー 出典:ヤンマー
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