そもそも「I-V特性測定」(I-V測定検査)とは何でしょうか? これは「I-Vカーブ測定検査」とも言われるO&Mにおける重要な精密検査のうちの1つで、モジュールの出力特性や発電量を計測し、モジュールが正常に機能しているかをチェックするものです。
屋外におけるI-V特性の測定方法については、既に「JISC8953(結晶系太陽電池アレイ出力のオンサイト測定方法)」というガイドラインが公表されていますが、ここでは「アレイ面の日射強度が700W/m2以上」と規定されており、測定の機会が制限されていました。
しかし今回の新しいガイドラインでは、もっと低照度からの測定を許容すると共に、測定の簡便化や、測定方法の明確化を行い、従来のガイドラインに比べてより簡便で、かつ測定機会を大幅に増やしたガイドラインとなっています。
今、PVTECなどを中心に、当ガイドラインのように、特定の測定法別のガイドライン作りが進められています。できるだけ早期に、各精密点検のルールや使用機材に関する基準ができ、各点検分野における保守点検の精度・安全性が高まることが期待されます。
冒頭で述べたように、JEMAとJPEAによる「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」は、主に電気関連の保守点検に関するガイドラインです。つまり、ここでは「架台基礎構造」など、構造面に関してはほとんど触れられていないのです。
しかし、今EPC(設計・施工事業者)、O&M事業者の現場では、電気関連のガイドライン以上に、この基礎構造、特に「架台基礎」に関するガイドライン整備の必要性が高まっています。架台の構造、特に強度(風圧荷重)の問題に起因する不具合やトラブル(風で架台が飛ばされてしまうなどの事故など)が急増しているからです。
こうしたトラブルが多発している原因は、JIS規格と照らし合わせてみても、架台など構造支持物の現在の基準が甘すぎる点にあることは明白です。経済産業省・資源エネルギー庁も、いまだ基礎構造に関するガイドラインが整備されていないことに対し以前から問題視しています。
そこで、早急に架台基礎など構造部分に関する基準を強化した新しいガイドラインを制定しようと民間側で動きはじめています。
実際に、既に存在するJISによる「太陽電池アレイ用支持物設計標準(JIS C 8955)」という構造設計に関するガイドラインの見直しをすべく、JEMAなどを中心とした委員会によって当ガイドラインの改訂版作成が進められており、遅くとも2017年4月くらいまでには公表される予定です。
一方、JEMA主導による上記ガイドライン作りと並行して、NEDOとJPEAが公募事業として進めている構造規格に関するガイドライン作りを、また、経済産業省の電力安全課を中心とした委員会も、構造規格に関するガイドライン作りを進めています。
どのガイドラインが、いつ、どのような内容で公表されるかは未定ですが、各団体、民間と行政がそれぞれ独自にガイドラインを作るのではなく、できれば構造に関する「統一ガイドライン」を、民間と行政が協力しあって作成することが必要なのではないでしょうか。
また、本来は構造設計と電気関連システムは密接に連動しているので、ガイドラインも構造系、電気系と分けて作成するのではなく、本来は両者を統合した内容のものを作成するのが理想です。
しかし、太陽光発電業界内の体制が複雑化していて足並みがそろっていないこともあり、電気関連分野と構造関連分野の間に、ある種の線引きのようなものがされてしまっているのです。ここに太陽光発電業界の根本的な問題があります。
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