この水素製造システムの核となるのが、下水と塩分濃度差を利用する発電システムの部分だ。海⽔からの⾷塩製造や醤油の脱塩などで既に実用化されている電気透析という技術を応用する。イオン交換膜を利用すると、海水と下水処理水を入れた時に塩分濃度の高い場所から低い場所にイオンが移動する。その際に発生する電力を利用して、電極部分で水素を製造する仕組みだ。
このシステムでは水素の他、酸素も得られる。下水処理水の高い水温を活用することで、発電出力および水素製造量の増加も見込めるという。最近では下水処理所の消化工程で得られるメタンガスを活用した水素製造の実証も広がっているが、塩分濃度差を利用したシステムであれば、こうした消化工程を持たない下水処理場であっても、海水さえ取得できれば水素製造を行えるメリットもある。
山口大学をはじめとする共同研究体は、2016年度にB-DASHプロジェクトにおいて福岡市で濃縮海水(処理済み海水)を活用した基礎調査を実施している。2017年度は実海水を用いて本格的な調査に着手し、主に水素・酸素製造能力の向上や前処理装置の確立技術を評価する計画だ。なお、同事業には、アストム(山口県周南市)が専用の膜製品などを提供している。
予定事業費は2017年度単年で3000万円を上限とする。今回、県産業技術センターのコーディネーターが特許調査などを行い同システムが世界初となることを確認し、参画機関調整や提案書作成支援を行い提案・採択に至ったという。
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