排出取引制度、埼玉県が目標を大幅に上回る成果:法制度・規制(2/2 ページ)
埼玉県では対象事業者のCO2排出量削減に向けて、さまざまな取り組みを推進している。1つは優良大規模事業所の認定だ。優れた事業所として埼玉県知事が認定した事業所について、目標削減率を緩和する制度である。対策が極めて優れている「トップレベル事業所」は2分の1、特に優れている「準トップレベル事業所」は4分の3緩和される。
2017年5月16日時点では、レンゴーの八潮工場(埼玉県八潮市)がトップレベル事業所に認定されている。レンゴーの発表によると、八潮工場は早くから重油からクリーンエネルギーである都市ガスへの燃料転換を進めてきたとともに、製造工程全般において省エネ効果の高い高効率設備の導入を図ってきた。2016年1月には建築廃材由来の木質チップを主燃料とし、工場で必要となる電力の約20%を賄う木質チップバイオマスボイラー発電設備を新設。年間約6万5000トンのCO2排出量削減を見込む。準トップレベル事業所には、曙ブレーキ工業の本社「Ai-City」(埼玉県羽生市)が認定されている。
参考:埼玉県における排出量取引の概念図 (クリックで拡大) 出典:埼玉県
対象事業者が温室効果ガスの削減対策などに必要な資金について、金融機関からの資金調達を低金利で長期固定の融資により支援する「環境みらい資金融資」もある。老朽化した熱源設備の更新や照明・空調設備の更新などを検討する事業者が利用可能だ。限度額は1億5000万円、融資利率は0.3%、返済期間は10年以内としている。
他にも省エネ支援を挙げた。専門員を事業所に派遣し、設備の使用状況を調査して省エネに関するアドバイスとともに、優良事例を紹介するセミナーを開催する。
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