政府は地球温暖化対策の1つとして、CO2を排出しない電源の環境価値を売買できるようにする方針だ。原子力・再生可能エネルギー・大型水力で作った電力の環境価値を「非化石証書」で取引する。小売電気事業者がCO2排出係数を低減するのに利用でき、国民が負担する再エネ賦課金も減らせる。
第73回:「火力発電に容量メカニズムを導入へ、すべての設備を対象に」
日本政府は2030年のCO2(二酸化炭素)排出量を2013年比で26%削減する目標を掲げている。そのためにCO2を排出しない非化石電源(原子力+再生可能エネルギー)の比率を44%以上に高める方針だ。小売電気事業者が取り扱う電力についても44%以上を非化石電源で調達するように法律で規定した。
非化石電源には原子力と再生可能エネルギーに加えて、従来からの大型の水力発電所が含まれる。この3種類の電源で発電した電力に「非化石価値(証書)」を与えて、卸電力取引所で売買できるようにする(図1)。そのために取引所の中に「非化石価値市場」を創設することを検討中だ。
現在の電力市場では、発電事業者と小売電気事業者が相対で取り引きした場合には非化石価値が認められる。ところが卸電力取引所を通すと、非化石電源と火力発電の電力が同様に取り引きされるため、非化石価値が認められない仕組みになっている(図2)。この状況では小売電気事業者が非化石電源の調達量を増やすうえで取引所を活用できない。
そこで取引所の中に「非化石価値取引市場」を創設して、電力と別に非化石価値だけを売買できるようにする。小売電気事業者や自家発電事業者は市場を通じて非化石価値を調達してCO2排出量の削減に生かせるようになる(図3)。法律で定められた非化石電源の比率に加えることができる。
今のところ市場を開設する時期は未定だが、2020年4月に実施する発送電分離(電力会社の送配電部門の中立化)までに創設する見通しだ。電力会社の発電部門と小売部門にも市場を通して非化石価値を売買することが求められる。
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