日本企業で初の「RE100」加盟、リコーはなぜ再エネ100%を目指すのか自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2018年03月27日 07時00分 公開

「RE100」に加盟するからこそできる提言

――RE100に加盟した背景を教えて下さい。

阿部氏 リコーがRE100に参加を決めた理由は、主に4つあります。

 1つが、先ほどもお話したように、世界では100%にするかどうかは別としても、再生可能エネルギーを積極的に活用する企業が増えているという点です。リコーは、環境経営のリーディングカンパニーとして、RE100に参加することで、よりはっきりとグローバルにコミットメントを示すこととしました。また、社員に対しても周知する狙いもあります。

 RE100に参加している企業は100社以上ありますが、そのほとんどがリコーが複写機やプリンターをすでに提供していたり、今後お付き合いをしたいグローバル企業であり、そういった企業と同じ価値観をもって活動していくことをグローバルに意思表明するという狙いもあります。これが2つ目の理由です。

 3つ目の理由が、自社の新規事業の後押しです。リコーグループは複写機をメインに、オフィスで使われるさまざまな画像機器を扱っていますが、太陽光発電の運用保守(O&M)、保守点検など新しい事業の立ち上げも行っています。RE100への加盟やそれに伴う再生可能エネルギーの積極的な活用は、これらのビジネスの後押しにもつながると考えています。

 4つ目が、最近のグローバルな流れとして、投資家の方がその企業の環境への取り組み方や内容を、投資判断の基準として考えるようになってきているという点です。利益率やキャッシュフローではない、非財務情報であるESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governanceの頭文字)に配慮している企業を重視するESG投資などがその代表例ですね。

RE100に加盟し、環境意識が高い会社としてこうした投資家からの評価の向上を図る狙いもあります。

――日本では現状、まだ再生可能エネルギーの価格が「高い」と指摘されることが多いです。リコーグループでは、どのように再生可能エネルギーを活用していく方針でしょうか。

阿部氏 日本では、企業などの需要家側は再生可能エネルギーを使いたいとは思っているものの、現状では価格が高いので使えない、今後価格が下がったら利用したいと考えているところが多いと感じています。一方、再生可能エネルギーを供給する会社は、環境意識が高い人は、高くても買ってくれるだろうと考えていて、「卵が先か鶏が先か」という状態になっていると思います。リコーは需要家として、再生可能エネルギーを積極的に使う、切り替えていくという意思表示を示すことで、国を含め供給側の改革を促すことも狙いとしています。

 リコーでは、自社の使用電力を再生可能エネルギー100%で賄うにあたり、再生可能エネルギー施設の設置や再生可能エネルギーの購入だけではなくて、省エネやプロセス改善による徹底的な効率化を大前提として考えています。

 よく、「グリーン電力証書などを購入して再エネ利用率を100%にするのですか?」と聞かれますが、今の段階でそういった方法は採らず、まずは徹底的な省エネに努めた上で、再生可能エネルギー設備の設置、電力の切り替え、生産効率化などで実現していきたいと考えています。

 現状、日本の電力市場の仕組みには、再生可能エネルギーのカウントや調達という面で課題があります。そこで、われわれのような企業がRE100にすることで、こうした調達の新しい仕組みを構築していこう、という社会への投げかけにもなればと考えています。例えば、2018年5月に始まる「非化石証書」の扱いについて、調達電力に原子力分も含まれるとなると、自分たちの再エネ利用率をカウントする際にはどうしたらいいのか。こういった点についても、RE100に参加しているからこそ、発言や意見も述べる機会が得られます。

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