NEDOが風力・地熱発電の環境アセスメントを迅速化する手法を公開。環境アセスメントの質を落とすことなく手続き期間を半減できるという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年3月、風力発電施設と地熱発電施設を対象とした環境アセスメント期間の半減に役立つ手法を取りまとめた「環境アセスメント迅速化手法のガイド−前倒環境調査の方法論を中心に−」を公表した。
風力発電所、地熱発電所では、出力1万kW以上が「第1種事業」、出力7500〜1万kW(キロワット)が「第2種事業」に区分され、これら一定規模以上の風力、地熱発電設備を建設・増設する際には、環境アセスメントを実施することが環境影響評価法により定められている。しかし、その手続きには4年程度を要することから、風力発電と地熱発電の更なる導入普及のためには、アセスメントの質を落とさずに手続き期間を短縮することが求められている。
そこでNEDOは、環境アセスメントに関する手続き期間の半減を目指して、2014年度から「環境アセスメント調査早期実証事業」に取り組んだ。同事業は、方法書手続きにおいて調査の対象や方法が確定した後に行われる現地調査・予測・評価を、配慮書手続きや方法書手続きに先行し、あるいは同時並行で進める「前倒環境調査」を実施することで、環境影響調査の期間短縮を図るもの。2018年2月末には国内で23件(風力21事業、地熱2事業)のすべての実証事業が終了した。
これまで2017年3月と2017年12月には、実証事業から得られた知見に基づいて、環境アセスメント手続き期間の短縮に必要となる前倒環境調査を行う際の課題への対処方法について「前倒環境調査のガイド 中間取りまとめ」として公表している。その後、終了した実証事業からの知見を加え全体の構成を見直し、今回、完全版となるガイドを公表した。
前倒環境調査を適用した環境影響評価の迅速化は、期間短縮のメリットがあるが、調査等の手戻りのリスクを伴う手法ともなる。どこまでリスクを許容するかは、制度上、環境影響評価の実施主体である事業者の総合的判断に委ねられる。
同ガイドは、その際の判断材料を提供することにより、風力発電と地熱発電事業を実施する事業者が、環境アセスメントの質を落とすことなく手続き期間を半減することに貢献するとしている。
内容は風力発電と地熱発電では、事業特性や地域特性、事業の進め方や地域コミュニケーションの在り方が異なり、同時に論じることはできないため、個別に編さんし、それぞれ「総論」と「技術事例集」の2巻構成とした。「総論」は、現行制度下での環境影響評価の適切かつ迅速な進め方について、その方法論を取りまとめている。「技術事例集」は、総論を簡潔にするため予備知識や解説が必要になる技術的な側面について、巻を分けて紹介している。
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