世界トップ企業が加盟する「RE100」、日本企業が「再エネ100%」を達成するには?「ポストパリ協定時代」における企業の気候変動対策(4)(3/4 ページ)

» 2018年12月03日 07時00分 公開

方法2.他社から再エネ電力を購入する

 他社から再エネ電力を購入する場合、「小売り事業者の再エネ電力メニューを購入する」「発電事業者から直接購入する」の2通りが考えられる。前者の再エネ電力メニューは、東京電力エナジーパートナーの「アクアエナジー100」や四国電力の「再エネプレミアムプラン」などが代表的なサービスだ。2018年7月にRE100参加を表明した丸井グループは、みんな電力が提供する「ENECT RE100 プラン」を用いているが、これはブロックチェーン技術を用い発電源が特定された再生可能エネルギー電力の供給を実現するものだ。

 その他、何社かの小売り事業者が、電源構成上は「再エネ100%」ではないものの、非化石証明書やグリーン電力証書などの仕組みを利用して再エネ100%と同等の環境価値をうたうプランを提供しているが、これは実質「方法3.証書の利用」と大差ないと考えてよいだろう。ちなみに、RE100参加のアスクルは小売り電気事業者のネクストエナジー・アンド・リソースが販売する「GREENa RE100 プラン」を導入しているが、これがまさにグリーン電力証書を活用したものである。

 後者の直接購入に関しては、電力事業者が太陽光発電設備を消費者の敷地(屋根など)に設置し、そこで発電した電力の売却益を得る手法(第三者所有モデル)が代表的である。消費者は自らの使用分だけをこの発電設備から定額購入することができ、初期費用は少額かつメンテナンス費用が不要で再エネを調達できるメリットがある。アップルは、日本で使用する電力についてRE100を達成するためにこのモデルを用い、第二電力と共同で国内304カ所の屋根にソーラーパネルを設置する計画を進めている。注2

参考:第二電力 株式会社 ニュース(http://daini-den.co.jp/news/news20170924.html)

 日本でリコーに次いでRE100を表明した積水ハウスは、非常に興味深いモデルを提供している。同社が販売するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、屋上の太陽光発電設備によりこれまで650MWを越える太陽光発電を供給してきた。余剰電力は今までFITによって電力事業者に買い取ってもらっていたが、2019年より順次FITが終了していくため、以降の余剰電力は積水ハウスが買い取ることになる。これにより、積水ハウスの顧客は「卒FIT」後も太陽光発電の利益を得られるようになる。

 積水ハウスは2040年までに事業で用いる電力を再エネ100%にすることを宣言しており、このころまでに卒FITからの太陽光電力によって十分な再エネ調達が可能になる見込みだ。RE100を活用して顧客とWin-Winの関係を築いた好例といえる。

方法3.証書の利用

 RE100達成のために設備投資を行うのは現実的ではない、または今すぐには難しいという考えもあるかもしれない。この場合、資金的にも、難易度的にも、最も簡便な方法が証書を利用する方法である。使用する電力は通常のもの(化石燃料を使用した電力を含む)でも、証書を別途購入することによって、制度的に「再生可能エネルギーと見なす」ことができる。日本の場合、この証書が3種類あり、制度が確立した順に「i)グリーン電力証書」、「ii)J-クレジット」、「iii)非化石証書」と呼ばれている。れぞれの特徴と概略を説明する。

i)グリーン電力証書とは?

 グリーン電力証書は、2001年に民間主導で導入された制度である。バイオマス発電所などでつくられた再生可能エネルギーの環境価値のみを分離し、証書化して販売するもので、証書には「発電所の名称・場所」「発電時期」「シリアルID」などの標準化された認証情報が記載されている。再エネの出どころが明らかであるため信頼性が高く、RE100はもちろん、SBTの目標達成やCDPの回答にも用いることが認められている。もし十分な量を購入できたのなら、最も汎用性(はんようせい)が高い証書と考えてよい。

 グリーン電力証書の制度開始以降、2014年11月までに認定されたグリーン電力設備の件数は1195件、設備容量の合計は約60万kWになる。電力証書の発行量については、日本全体で3.16億kWh(316GWh、2016年度実績)であった。これは同年度における全国の発電電力量合計(9941億kWh)の約0.03%であり、同年の再エネ発電量(約900億kWh)の約0.35%にしかならない。すなわち、グリーン電力証書の発行量は現在極端に少なく、入手が非常に困難な状況になっている。また、単価も高く、現在の相場では最低でも1kWh当たり3円以上を支払う必要がある。

 一方、もし海外に拠点を持っているのなら、海外のグリーン電力証書は非常に安価(1kWh当たり0.1円以下である場合が多い)であるため、使い勝手がよい。海外のグリーン電力証書については、地域別に統一された認証システムを持つものが多い。北米ではRECs、欧州ではGOs、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア圏ではI-RECといった証書を購入することができる。アジア圏などで使われているI-RECについては、オランダにあるNPO、The International REC Standard(http://www.internationalrec.org/)が、各国のグリーン電力証書のプロジェクト情報を管理するデータベースを運営しているので、自社の拠点がある地域をこちらで検索するのがよいだろう。RE100やSBTは海外拠点におけるエネルギー消費も報告の対象範囲になるため、まずは海外から証書の導入を考えるというのは、資金的にも非常に現実的な解であるといえる。

各国のグリーン電力証書 認証基準分布 出典:Renewable Energy/ Natural Capital Partners( https://www.naturalcapitalpartners.com/solutions/solution/renewable-energy )

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