環境分野で最重要の格付指標となった「CDP」、効果的に活用するポイントとは?「ポストパリ協定時代」における企業の気候変動対策(5)(2/4 ページ)

» 2018年12月14日 07時00分 公開

CDPが発行する「質問書」、実際にどう回答すべきか?

 さて、具体的なCDPの回答について述べていこう。まず、CDPが発行する質問への回答は、全てWeb上で行うことができる。多くの企業では、CDP回答の担当者が、別シートに設問と回答案をあらかじめ記載しておき、社内で決裁をとってから記入・送信という手続きを取っているようである。

 2018年の質問項目は、「はじめに(C0)」から「サインオフ(C14)」まで合計15の章から構成されていた。これらの項目には、自社の気候変動に関する取り組み内容を素直に記載していけばよいのだが、「事業戦略の中に気候変動問題が組み込まれているか」「気候関連シナリオ分析を使用しているか」「カーボンプライシングを導入しているか」など、事前に準備しておかなければ回答できない設問もある。

 後述するように、2018年からCDPの質問書は「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に合わせて再構成されており、CDPの設問自体が企業がどのような形で気候関連の情報を開示していけばよいかの国際的な標準となっている。これらの設問を気候変動リスクに対する社内取り組みの指針の一つとして捉え、余裕を持った回答の準備をしておくとよいだろう。

2018年のCDP質問項目 資料:CDP Climate Change Questionnaire 2018(https://www.cdp.net/ja/)を基に筆者作成

 CDPの回答の締め切り日は毎年7〜8月に設定される。Scope3の排出量算定には、サプライヤーなど自社以外のバリューチェーン全体にかかる排出データを収集・集計していかなければならず、膨大な時間がかかってしまうことが多いので、必要なデータの収集や算定といった作業は、できる限り前倒しで進めていくべきである。CDP上位企業の排出量算定の担当者は、関係各所と連携を取り、バリューチェーン排出量の算定に必要なデータを効率的に収集できる組織体制を組んでいる場合が多い。また、全国に拠点があるような企業は、各設備・施設のエネルギー消費量をクラウド経由で収集できるようなシステムを導入するなど、さまざまな工夫をしている。

データ収集の概念

 また、効果的な評価アップの一手段として、算定内容に対しての認証機関による第三者認証を取ることをお勧めする。第三者認証を取ることによって、算定内容の客観的な正しさを証明でき、信頼性を担保することができる。CDP上の評価アップはもちろんだが、検証報告書の提示で、内部の機密情報を開示せずに、信頼性の確保を説明することができるというメリットもある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.