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» 2019年07月16日 07時00分 公開

和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(13):DELIAが目指すブロックチェーンで創る「分散型エネルギーの経済圏」とは何か――代表・中村氏に聞く (1/3)

ブロックチェーンによる分散型エネルギーの情報基盤の開発、およびビジネス応用に関わる技術取得とアプリケーション開発を目的としてユニークな活動している団体がある。一般社団法人「DELIA」である。では、その設立主旨や狙いは何か、また今後の具体的活動はどうしようとしているのかなど、代表理事を務める中村良道氏にインタビューを行った。

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),スマートジャパン]

 太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、こうした分散型エネルギーとブロックチェーン技術注1を組み合わせることで、新しい電力流通の仕組みを模索する動きが広がっている。その中で2018年4月、ブロックチェーンを活用し、新たな「分散型エネルギーの経済圏」の実現を目指す一般社団法人DELIAが立ち上がった。

 同法人の代表理事を務めるのは株式会社スマートエナジー研究所 ファウンダーで、分散エネルギー推進プロデューサーの中村良道氏である。今回、ブロックチェーンによる分散エネルギー情報基盤アライアンスをうたうDELIA設立の背景や目的、さらには今後の具体的な活動内容について話を聞く機会を得た。

注1:「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結してデータを保管するデータベースの構築手法。第三者機関を通さず偽装や改ざんを防ぐトレーサビリティー環境を整備でき、高い透明性や信頼性を確保できることから、さまざまな産業への応用が期待されている。

写真左より筆者、分散エネルギー推進プロデューサーの中村良道氏

DELIAとは

和田憲一郎氏(以下、和田氏 これまで取り組まれてきた太陽光発電や燃料電池などの分散型エネルギーの企画開発にとどまらず、最近、また難しいことを始められたそうですね。それについて教えてください。

中村良道氏(以下、中村氏 私がやろうとしているのは、分散型台帳、つまりブロックチェーンの活用です。この技術をエネルギー分野に活用して、分散型エネルギーの経済圏を創る、つまりビジネスとしてどう使っていくかを考えようと。かなり難易度は高いです。

 ブロックチェーンの活用方法についてですが、これには1つの情報から、電力取引、環境価値の取り引き、地域内の高速同期制御、VPP(バーチャルパワープラント)との接続など多くの広がりを持たせたいと思っています。意味あるデータをトランザクションとしてパックして、ビジネスへ活用できたら良いなと。

 私自身、ソフトウェア作った経験は多少あるものの、改めて15年振りに専門書をたくさん購入して、プログラミングを約2年間徹底的に勉強し直しました。やはり自分でできないと話になりません。また、肩書よりも、自分で何をしているかが大切と思い、自ら「分散エネルギー推進プロデューサー」と名乗っています。

和田氏 それがDELIAの設立につながるのですね。なぜDELIAを作ろうと思ったのか、より詳しくその背景や目的を教えてください。

中村氏 DELIAとは、「Distributed Energy Leader Infrastructure Alliance」の頭文字を取ったもので、日本語では「ブロックチェーンによる分散型エネルギー情報基盤アライアンス」と表します。DELIAでは2つの仕組みを作ろうと考えました。ETP(Energy Transfer Proof)とJWATです。ETPとは、電力の移動証明を意味します。分散エネルギーの電力の移動証明をリアルタイムに追いかけて、記録する役割を担います。一方、JWATは設備投資の運営や決済に使う通貨の役割を果たします。そしてこの物理界(ETP)と経済界(JWAT)を結ぶ仮想環境を構築し、事業化していこうとしているのがDELIAなんです。

図表1 DELIAの概要

和田氏 ETPとJWATの仕組みについては、後ほどさらに詳しく聞かせてください。その前に、なぜDELIAでそうした新しいエネルギーの経済圏を作ろうと考えられたのでしょうか。

中村氏 まず一つはブラックアウト(全域停電)です。2018年9月に地震の影響で北海道全域がブラックアウトになりました。この時、配電網につながる再生可能エネルギー電源は、現状の仕組みではこうした際に電力供給の構成員としてあまり頼りにならないということがわかったのです。そこで、再生可能エネルギーを本当の意味で「ベースロード電源」とするためには、もっと頼りになる存在へと性格を変えなければないと考えたのです。

 こうした背景があって、DELIAでは頼りになる分散型エネルギーの実現を目指そうと。具体的には柔軟な電力の融通や、自律的なシステムの導入です。また、再生可能エネルギーの経済的な自立も目指していきたい。その際に、トークン(暗号資産、いわゆる仮想通貨)を活用したら、安く分散型エネルギーの経済圏を創ることができるのではないかと考えたのです。

 ここからは話が少しそれますが、それをどう実現するかを自然界からヒントを得ました。生物の細胞内のミトコンドリアでは、非常に効率よくエネルギーを生み出す仕組みがあります。また葉緑体は環境からエネルギーを得ることを可能にしています。このように細胞が自律的で、かつ高効率なエネルギー変換が可能となり、各個体が互いに同期・協調してより大きな個体として活動できるのです。しかし、群れに特定の管理者、指揮者はいません。一つ一つのものは別々でも、ある情報が瞬時に共有されることで、全体調和が生まれるのです。ここからヒントを得て、こうした特定の管理者がいなくとも情報が共有され、全体調和を生む仕組みというのは、これからの分散型エネルギー社会の実現に有効なのではないかと考えました。そして、その実現に、ブロックチェーンという技術が使えるのではないかと。

図表2 自然に学ぶ(ミトコンドリアの例)
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