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走行中のEVへワイヤレス給電に成功、東大らがインホイールモーターを新開発電気自動車(2/2 ページ)

» 2019年10月11日 07時00分 公開
[スマートジャパン]
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小型かつ高性能化に成功

 これらの課題解決を目的に開発した第3世代のシステムでは、EVの駆動装置であるモーター、インバータと、走行中ワイヤレス給電の受電回路のすべてをホイール内の空間に収納するインホイールモーターユニットを開発した。

 第3世代ではモーターに設計の最適化と合わせて超小型SiCパワーモジュールを搭載し、インホイールモーターに適した構造とすることでコンパクト化に成功。車両への搭載性を大幅に改善することに成功した。さらに、は乗用車クラスのEVに相当し、第2世代の2倍以上となる1輪当たり25kWのモーター性能を実現した。

開発したワイヤレスインホイールモーターの先代モデルとの比較 出典:東京大学

 さらに、走行中のワイヤレス給電能力も高めることに成功した。第2世代のシステムでは1輪当たり10kW程度であったのに対し、第3世代では性能が20kWに向上。研究チームが神奈川県内の実際の市街地一般道路で取得したデータを基に試算を行うと、この性能を持つ走行中ワイヤレス給電システムを、信号機手前の限られた場所にだけ設置したスマートシティが実現した場合、EVユーザーは充電の心配をすることなく移動できるという。

関連特許はオープン化

 第3世代システムの開発に向けて東京大学は、2018年度からブリヂストン、NSK、2019年度から東洋電機製造を共同研究機関として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催する未来社会創造事業の研究プロジェクトの一環として企業との共同開発を進めてきた。これらの企業の他、村田製作所、TDK、東レ・カーボンマジック、ティラド、カーメイトの協力も得ている。

 走行中給電の社会実装に向けては、クルマだけでなくインフラを含めた大規模なシステムの構築が必要で、産業分野を超えたコラボレーションが求められる。そこで研究グループではこのプロジェクトに関わる基本特許をオープン化することに合意しており、プロジェクトの運営委員会で承認された企業・団体が権利化された技術を無償で使用可能となる知的財産の仕組みを整備する方針だ。

 今後は2022年までにタイヤを含めた車両での評価を行い、2025年に実証実験フェーズへの移行を目指すとしている。

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