見えてきた2020年度のFIT改革、ソーラーシェアリング市場は大きな分岐点にソーラーシェアリング入門(25)(2/2 ページ)

» 2020年02月17日 07時00分 公開
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ソーラーシェアリングは「例外的な区分け」、今後の政策支援の分岐点に

 さて、本連載の昨年12月の記事でも取り上げたとおり、小規模事業用太陽光発電というカテゴライズで低圧案件を中心に太陽光発電の“全量FIT外し”が始まった中で、営農型太陽光発電は1つ例外的な区分けになることが確定しました。

 営農型太陽光発電で農地の一時転用許可のいわゆる「10年許可」の要件を満たす場合には、新たに設定された「地域活用要件」を満たすという扱いになり、災害時に活用できる設備を備えていれば全量FITの適用を受けることができるという形です。以下、第55回調達価格等算定委員会の資料から、営農型太陽光発電に関する項目を抜粋しました。

 営農型太陽光発電は、営農と発電の両立を通じて、エネルギー分野と農林水産分野での連携の効果も期待されるものである中で、一部の農地には近隣に電力需要が存在しない可能性もあることに鑑み、農林水産行政の分野における厳格な要件確認を条件に、自家消費を行わない案件であっても、災害時の活用が可能であれば、地域活用要件を満たすものとして認めることとした。

 具体的には、農林水産省において、特に営農が適切に継続される蓋然性が高い場合や、荒廃農地の再生利用の促進が期待できる場合等については、10年間の農地転用を認めている。長期安定的な発電を促しつつ、エネルギー政策と農林水産政策の連携の深化を図っていくため、10年間の農地転用が認められ得る案件は、地域活用要件を満たすこととなる「農林水産行政の分野における厳格な要件確認」を経たものとする(※)こととした。

(※)農地転用の制度運用上、FIT認定がなければ農地転用許可を得ることが実質的に難しいとの指摘があるため、上記条件の下での農地転用許可がなされることを条件にFIT認定を行い、事後的に農地転用許可がなされたことを確認することとした。

 営農型太陽光発電の特徴として、エネルギー分野と農林水産分野での連携の効果を期待という点や、農地では近隣に電力需要がない点を挙げ、農地の一時転用許可という行政による審査が事業期間中も行われることから、地域活用要件を満たし得る事業として取り扱われるようになっています。太陽光発電で唯一、営農型太陽光発電にだけこの整理が行われたことは、今後の政策的な支援展開を考える上でもターニングポイントになるでしょう。

 2020年度は全量FITが残ることになりそうな低圧規模の営農型太陽光発電ですが、「10年許可」の要件には荒廃農地を再生することや、第2種・第3種農地を活用した場合も該当します。従って、小規模なソーラーシェアリング事業を行う中では、これまで完全転用によって雑種地として野立ての太陽光発電が設置されたような土地で農業が継続されたり、売電収入のインセンティブを加味した農地再生の事例が増えたりすることも期待されます。

 実質的に低圧規模の太陽光発電の新設を認めないに等しい今回のFIT見直しにあって、営農型太陽光発電への導入を一定程度誘導するような措置と捉えることもできます。これで、農業と不可分に事業運営される営農型太陽光発電が、今後の地域における太陽光発電の拡大でこれまで以上に重要な役割を果たすことになっていくでしょう。

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