「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの事業性に大きく関わる「架台」の設計について、その種類から選ぶ際の注意点などを解説します。
2020年度から改訂されたFIT制度に、低圧規模の全量売電対象としてソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が残ったこともあり、改めて野立ての太陽光発電設備とのコスト差が注目されています。この2つの発電方式を見た場合、コストに直結する設備面で大きく異なるのが「架台」です。ということで今回は、ソーラーシェアリングの架台設計を改めて考えてみます。
農林水産省がソーラーシェアリング設備に対して定めている設計要件には、農作物の生育に適した日照量が確保できる設計であること、農作業に必要な農業機械等を効率的に利用して営農するための空間が確保されていることなどがあります。定量的な規定は「最低地上高おおむね2メートル以上」というところのみなので、各事業者による多彩な解釈によって色々なパターンの架台設計が行われています。
こうした要件があるなかで、ソーラーシェアリングの架台方式は、大きく分けて藤棚式とアレイ式に分類されます。また、事例は少数ですが一本または二本足の可動式(追尾式)架台もあります。
実際には藤棚式とアレイ式の設計を採用している事例が多く見られますが、藤棚式は農作物に均等な日照を確保できることと設備下で農業機械を取り回しやすいことなどを特徴とし、アレイ式は野立ての積雪地対応の設計を転用できるので低コストに設置ができることが主な特徴です。
ソーラーシェアリングに特徴的な藤棚式架台は日本で考案された設計なので、日本の事例を参考にしている韓国や台湾などでも多く見られます。藤棚式とアレイ式のどちらを選ぶかは、主に農作業の作業性や作物の生育に主眼を置くか、発電設備として低コストに設置できることに主眼を置くかが、事業者にとっての判断基準になっているようです。
どちらの架台を選ぶにせよ、注意しておきたいのが、架台の設計によって変わってくるのは日照量だけでなく、地面の湿度や温度に風の流れなど幅広い環境の変化が起きるという点です。従来、ソーラーシェアリングでは農作物の生育条件を「光飽和点」軸に考えてきましたが、あくまでも日照量・日射量は1つの要素でしかありません。もし架台メーカーなどで光飽和点だけを理由付けとして売りにしている製品があったら、採用には注意が必要です。
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