経産省が非効率な石炭火力を廃止し、再生可能エネルギーの導入拡大を促す新たな制度設計の議論をスタート。今後の再エネ事業に大きな影響がありそうだ。
温暖化対策の観点から、国際的に逆風を受ける石炭火力発電。日本でも非効率な石炭火力の廃止を促し、再生可能エネルギーの導入拡大を促す新たな制度設計の議論がスタートした。
経済産業省は2020年7月13日、梶山弘志経済産業大臣が打ち出した石炭火力の縮小方針を受け、具体的な政策内容について検討する有識者会議を開催。非効率な石炭火力の将来的なフェードアウトを実現する新たな規制措置の内容と、再生可能エネルギーの利用を広げる新たな送配電網の利用ルールを検討する――というのが大筋の目的だ。
ただ、その実現に向けては、詳細な議論と綿密な制度設計が必要になりそうだ。非効率石炭を廃止とエネルギー安定供給の両立をどう実現するかという点も大きな議題の一つであり、廃止に向け事業者側にどのような経済的インセンティブを設計するかなど、検討すべき点は多い。エネルギーの安定供給という観点では、足元で再稼働がほぼ進んでいない原子力発電の将来の稼働率についてどう考えるのか、といった問題も大きく関係してくる。
現在、政府が掲げる2030年の日本の電源構成における石炭火力の比率目標は26%となっているが、足もとの2018年度における同比率は32%。2030年度の電源構成目標を達成するためには、さらなる石炭火力の削減が必要な状況にある。
政府が廃止を目指す「非効率石炭火力」とは、主に発電効率が40%以下の亜臨界圧、超臨界圧と区分される火力発電を指す。2018年度の電源構成の32%を占める石炭火力だが、その約半分(電源構成に対して16%)が非効率石炭による発電となっている。台数ベースでみると、現在国内にある140基の石炭火力のうち、114基が非効率石炭に該当する。
114基の非効率石炭について、地域ごとの設置設備容量を見ると、全国で大きなばらつきがある。そのエリアにおける全発電容量(出力ベース)に対し非効率石炭が占める割合では、関西は0%なのに対し、沖縄では34.8%である。また、発電電力量ベースでみると、地域間での差はより拡大する他、多くのエリアで出力ベースでみた比率以上に、非効率石炭への依存度が高い状況もうかがえる。これは原子力発電所の再稼働が進んでいないことも影響していると考えられる。
こうした状況にある非効率石炭について、稼働に対する新たな規制措置については、省エネ法の規制として検討を進める。その具体的な内容については、今回開催した総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会と、省エネルギー小委員会の下の合同ワーキンググループにおいて、議論を進めていくこととなった。
一方、上述のように地域ごとに状況が異なる中で、非効率石炭の縮小と電力の安定供給を両立する方法については、電源予備力の確保といった容量メカニズムの考え方がポイントであり、容量市場の検討を進めてきた制度検討作業部会において議論を進めていく。
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